私立秀麗華美学園
駅に着いたのは丁度お昼時の時刻だった。
ゆうかが予約すると言っていたのはレストランのディナーだそうなので、昼食はオープンカフェで軽く取ることにする。

それぞれパスタと飲み物を注文して一息ついたところで、おそるおそる、疑問を口にした。


「あのー、今日は、どこに行くんですかね」


メニューを折りたたんでいたゆうかがちらりと視線を上げ、にやりと笑う。何か企んでいそうな小悪魔の顔。


「ディナーの場所以外は決めてないよ」

「じゃあ、ここ出たらどこに……」

「今日はね、」


顔の下で両手を組んで。あごを乗せて少し引いたら、意識してるのかしてないのか、完璧な上目遣いの完成だ。


「和人の行きたいところへ行こうと思って」

「……俺の?」

「どこでもいいよ。着いて行くから」


予想外の回答に、咄嗟には返事が浮かばない。行きたいところ。俺が行きたいところ。


「『ゆうかの行きたいところ』は、なしね」

「や、やっぱだめか」

「行きたいところ、見たいもの、やりたいこと、なんでもいいの。ここ出るまでに、考えといてよ」


ゆうかはにっこり笑って「お手洗い」と席を立った。

行きたいところ……考えてみて改めて、自分の行動要因がゆうかばっかりなことを思い知る。
「なんでもいいよ」はいつもはこっちの台詞だったけど、言われてみると困るものだ。

とりとめのない会話をしながら食事を終えて、一息ついたところで同じことを尋ねられる。


「どこってわけじゃないんだけど、男物の小物買えるとこ」

「何か買いたいの?」

「雄吾の誕生日、もうすぐだから」


2月の末にある雄吾の誕生日プレゼント。ちょうどいいタイミングだ。


「オッケー。和人のしたいこと聞いてるのにひとのプレゼント買いに行くとこが和人らしい」

「自分の欲求が全然わかんねー……。あんまり考えたことなかった」

「知ってる。じゃあデパートのメンズ館にでも行こうか」


席でお会計をしてカフェを出る。
夏に帰省した際の交渉で小遣い制は脱出していたためゆうかの分も払えた。なんかほんとによかった。はっきり言ってお金のことは、どっちが払おうと大した問題ではないけれども。

形だけでもカップルに見えたらいいなーなんて思ったのは、初めてだったかもしれない。
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