私立秀麗華美学園
普段の朝は、俺とゆうかの待ち合わせの方が早いため雄吾よりも先に部屋を出ることが多かったが、最近ではもっぱら後から出ていた。
よくない傾向だなあとは思いつつも、かろうじて未だに遅刻はしていないので、改めもせずにのろのろ準備をする。
昨日の今日で、幸ちゃんとの接し方を考えながらブレザーに袖を通していると、ドアノブに手をかけた雄吾が言った。
「少し、気になることがある」
「幸ちゃんのこと?」
「転校の時期としておかしくはないか。もう2年も終わる。学年末テストを控えたこの時期だ」
「それは、みんなも言ってたけど」
「転校生、というワードに俺たちが敏感になっていたのは、もう半年以上も前のことになるか」
言わんとしていることがわかった。例の、特別な生徒のことだ。
「……幸ちゃんが?」
「確信も何もないが。可能性として、無くは無いなとふと思った。じゃあ、先に出る」
確かに、無いとは言えないことだった。だけど、もしそうだとしたら、花嶺はそのことを知ってーー?
とてもじゃないけど、俺に判断できることではなさそうだった。
ゆうかに会いたい。ゆうかと話したい。
いくら思ったところで登校は今日も一人だ。そっと戸を引いて、教室に恐る恐る入る。
幸ちゃんの席を見ると、既に姿があった。というかあるらしかった。姿は見えないけど、周りに人垣ができている。
「不思議ね。すっかりお姫様のようよ」
苦笑気味に槙野さんが説明してくれた。どうやら人垣を成しているのは、全て男子生徒らしい。
「昨日の放課後、学校中案内したんですって。あの中のひとりが言ってたわ。で、すっかり虜。どんな魔法を使ったのかしら」
いくらなんでも素早すぎる、と舌を巻く。でもたぶん、ゆうかに一目惚れして以来この長きにわたって虜にされ続けている俺に言えることはない。そういう血なのか。小悪魔の血か。
「魔法の効かなかったやつもいるみたいだが」
進が俺を見て言う。ついでなのではっきり言われてしまったことを告げたが、たいして驚かれはしなかった。
「月城くんのことが好きで、だけど他の大勢の男の子にも色目を使ってるってこと? 理解がしがたいわ」
「案外全員に言ってたりしてな」
その方がいいんだけど、とは、さすがに言えなかった。
よくない傾向だなあとは思いつつも、かろうじて未だに遅刻はしていないので、改めもせずにのろのろ準備をする。
昨日の今日で、幸ちゃんとの接し方を考えながらブレザーに袖を通していると、ドアノブに手をかけた雄吾が言った。
「少し、気になることがある」
「幸ちゃんのこと?」
「転校の時期としておかしくはないか。もう2年も終わる。学年末テストを控えたこの時期だ」
「それは、みんなも言ってたけど」
「転校生、というワードに俺たちが敏感になっていたのは、もう半年以上も前のことになるか」
言わんとしていることがわかった。例の、特別な生徒のことだ。
「……幸ちゃんが?」
「確信も何もないが。可能性として、無くは無いなとふと思った。じゃあ、先に出る」
確かに、無いとは言えないことだった。だけど、もしそうだとしたら、花嶺はそのことを知ってーー?
とてもじゃないけど、俺に判断できることではなさそうだった。
ゆうかに会いたい。ゆうかと話したい。
いくら思ったところで登校は今日も一人だ。そっと戸を引いて、教室に恐る恐る入る。
幸ちゃんの席を見ると、既に姿があった。というかあるらしかった。姿は見えないけど、周りに人垣ができている。
「不思議ね。すっかりお姫様のようよ」
苦笑気味に槙野さんが説明してくれた。どうやら人垣を成しているのは、全て男子生徒らしい。
「昨日の放課後、学校中案内したんですって。あの中のひとりが言ってたわ。で、すっかり虜。どんな魔法を使ったのかしら」
いくらなんでも素早すぎる、と舌を巻く。でもたぶん、ゆうかに一目惚れして以来この長きにわたって虜にされ続けている俺に言えることはない。そういう血なのか。小悪魔の血か。
「魔法の効かなかったやつもいるみたいだが」
進が俺を見て言う。ついでなのではっきり言われてしまったことを告げたが、たいして驚かれはしなかった。
「月城くんのことが好きで、だけど他の大勢の男の子にも色目を使ってるってこと? 理解がしがたいわ」
「案外全員に言ってたりしてな」
その方がいいんだけど、とは、さすがに言えなかった。