私立秀麗華美学園
番号を調べて連絡し、ダイニングホールで待ち合わせた。

隅では今日も暖炉が燃えていた。雄吾が風邪をひいた日の夜、傍のソファーに座っていたゆうかを思い出す。

俺は数学をやっていた。難しいと聞いていたベクトル。ゆうかが十二月に終わらせてしまったと言っていた空間ベクトルは、今回のテスト範囲だ。


やがて、細い眉毛の男がやってきた。同じクラスの本田だ。


「いきなり悪いな」

「別に。ほんとにいきなりだけどな」


学園祭で、調理班に属していた男だ。あの時リーダーをやっていなければ、こいつとこうやって話をすることにもならなかっただろうな、と思う。


「まあ正直想像はつくけどな。姫のことだろ?」


先にそういう話をもちかけてきたのは本田の方だった。
今の姫は三人目だという。既に二度も相手の変更があったということ。


「……見当ついてるってことは、そう見えてるってことだよな」

「一度目の時が似てた」


本田はガラス板の載ったテーブルを挟んで正面の椅子にどっかりと座り、脚を組んで背もたれに身を預けた。


「順番は逆だったけどな。転校生がやたら懐いてくんなと思ってたら、元々姫だったやつが転校してったよ。
驚いて、はじめはかなり抵抗した。親父に詰め寄っても当然のように無駄なことで。次の学期からは正式に姫と騎士の関係だ」


なんでもないような顔をして、本田は話をした。前髪を触る手つきが機械的だ。


「二度目はな、まあそれも勝手な都合で解消させられて、しばらくフリーの期間があった。んでこれまた新学期、同じクラスだった亜美子とそういうことになった。その時は抵抗もしなかったな。前にも言ったが積極的に受け入れた。亜美子も境遇、似てたしな」

「それさ、学園長は知ってんのかな」

「椿先生か? なんでいきなり」


この間のお話から考えて、変更を容易に認めるとは思えなかった。


「親の都合で変え放題なのか」

「実質ってとこだろ。自筆の書類が必要だって噂聞いたこともあるけど、うちの親父なら勝手に書きかねないからな」


不透明な、課題となっている部分。そうおっしゃっていたところにあたるということだろうか。
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