私立秀麗華美学園
「だいたい、ゆうかの方だって、似たようなものだったじゃない」


百合子さんの刺々しい声に、俺は思わず身を隠す。


「騎士がいながら、笠井くんにも色目使ってたわけでしょ? 月城くんが自分にぞっこんなのをいいことにいつも振り回して。花嶺からすれば月城なんて必死で捕まえといて当然じゃないの。月城くんはかわいそうよね。喜んで姫やるって人他にいるじゃない」

「あら、それって百合子のことかしら」

「そうね、私を含めてくれても結構だけど?」

「だってねぇほら、ヨハンの時だって。あの子ったら……」


3人は倉庫の前で立ち止まって話を続けていた。背筋をぞわっと気味の悪いものが走り抜ける。唇をぎゅっと噛んで目をつぶった。冷たい風が吹きつけて大木を揺らす。ざわめきが頭の中でこだまする。


「だから、幸の方も同じなんでしょう」

「転校してきていきなりあれだけ媚態振りまけるってすごいと思わない?」

「花嶺の女の子ってみんなそうなんじゃないの?」


きゃはははははと悪魔のような笑い声。足元で砂が鳴る。右足をぐっと踏みしめた時、3人の前に金髪の男が現れた。


「おーい、こらこら、何やってんだお前ら」

「あらっ、零さん」


作業着姿の零さんの姿を認め、声がさっきまでよりワントーン高くなる。


「女の子だからってな、さぼりは見逃せねーからな?」

「やだぁ、そんなのじゃありませんよぅ」

「そうよ、これを取りに行くように頼まれただけですのよ」

「へぇへぇ。さっさと行きな3人娘」


3人は軍手でしっしっと追い払う仕草をする零さんにきゃらきゃら笑いかけながら、ラインカーを引きずって、戻って行った。
落ち葉がびゅぅんと飛ばされていく。踏み出した足を引っ込めて息をつくと、白くなった息の向こうで零さんがこっちを向いた。


「零、さん」

「よく踏み止まったんじゃねーか?」


その一言で、零さんが今この場の全てを見ていたことを知った。
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