私立秀麗華美学園
何から考えていいのかわからなかった。それでも。なんでもいいから。

ハーブティーの香りを嗅ぐと、久しぶりにゆうかのことを強く思い出した気がした。


やっぱり嫌でも、月城と花嶺の問題として考えることは避けられない。
「政略結婚」の前段階の「政略婚約」が反故になるのだから、両家の間に何かトラブルがあったと考えるのが一番簡単だ。でも結局変わる相手も花嶺の幸ちゃんで、そこが不可解なところ。

だとしたら、淳三郎さん個人との間に……? しかしつい2か月前の兄ちゃんと那美さんの入籍祝いのパーティーでは普段通りのご様子だった。
それから何かあったのだとしたら、幸ちゃんの帰国が早すぎるように思える。

ゆうかと幸ちゃんの違いって何だろう。客観的に考えるの、難しすぎる。
2人の立場はそう変わらない。入り婿である幸ちゃんの父親は淳三郎さんの義理の兄ではあるのだが、立場としては部下に近い。

月城から見て、2人にどんな違いがあるのだろう。

ゆうかと幸ちゃん。

2人…………。


暖炉と反対側の壁に並んだ小さな窓からは夕陽が差しかけて、それぞれの長方形の上の半分だけが光に縁取られている。

ガラステーブルのところに、向かい合わせで座って何か真剣な顔で話し込む男女の姿があった。
パソコンのところには、ひとつの画面を親密そうに覗き込む2人。
今部屋に入ってきた2人は、お互いの挙動をうかがって、どこに座ろうとも言い出せずまごづいている様子。


……もしかしたら。
比べなくちゃいけないのは、ゆうかと幸ちゃんじゃなくて、俺とのセットで考えた時の2人なのかもしれない。

俺とゆうか。
俺と幸ちゃん。


それを比べた時、月城が、いや、俺の家族が、思うこと。

その2つにある違いは、思い思われの矢印の向きだ。
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