私立秀麗華美学園
どうやら冗談ではなさそうな、「好きだよ」を、全面に押し出してアピールしてくる幸ちゃん。
言わずと知れた、10年来の俺の片思い。
それでも、帰省の時とか、クリスマスパーティーの時とかには、この一年での前進を少しは理解してもらえてるはずだし、稔や那美さんあたりががそんなことは……と瞬時にいろんなことが頭をよぎったが、その真ん中に、食堂で話をした時の幸ちゃんの言葉が浮かんできた。
「それに、幸の方が、和人くんのこと、好きだとおもうなぁ」
あの時の嫌な感覚が蘇る。俺はなんて返事をしたんだっけ? 何も言えなかったんだっけ?
例えば、俺の幸せを願って、とか。
10年経っても相思相愛になれない相手より、最初から気持ちを向けてくれる相手を、って感じで。
……いや、でも、そうだ、それを言うなら淳三郎さんの方こそ。
ゆうかにもっと適切な相手が見つかったとか。それをうちが受け入れたとしたら。俺に他の花嶺をあてがえるとしたら、受け入れたとしてもそんなに不思議ではない。
――どちらにしろ、そういうことになってくると、問題はひとつだ。
ゆうかがそれを、承諾したのかということ。
どちらも間違っているかもしれない。何か他の思惑があるのかもしれない。
だけどやっぱり俺が確かめたいのはそこだった。ゆうかが今この状況をどう思っているか。
まずはそのことだったのだ。
そんなことすら見えなくなっていた。
ダイニングホールを出た俺は早足で自分の部屋へ戻った。扉を開けると制服姿の雄吾がいた。
「あ、おかえり! 雄吾、この間真理子さんからここにかかってきた時の番号、残ってるよな?」
「あ、ああ。履歴を見ればわかると思うが」
目を丸くした雄吾の横を通り抜け、ベッドに座って電話の履歴を確認する。よかった、非通知になってない。おそらく病院の個室の固定電話だ。一呼吸置いてリダイアルのボタンを押そうとすると、雄吾が慌てた声を出した。
「かけ直すつもりか? この間も伝えたが、」
「連絡してくんなって話だろ? そりゃたぶん普通に出てはくれないと思うけど、どうしてもゆうかと話したいんだ」
「真理子さんに賭けるのか」
「……もしかしたら、ゆうかが出てくれるかもとも思ってるけど」
「想像した条件下にあった場合、一人にはさせてもらえていない可能性が高い」
「それでも。何か、何かしないと」
絶対に譲らないつもりで、咎めるような視線を跳ね返す。雄吾がもう一度開きかけた口を、閉じた。
「……もし、それが駄目だったら、稔さんに賭けろ。彼は真理子さんとも通じているんだろう。この状況の中でもっとも微妙な立場だ。俺ならそうする」
「ありがとう」
雄吾がクローゼットの方へ向かうのを確かめ、一拍おいて深呼吸してから、リダイアルのボタンを押した。
言わずと知れた、10年来の俺の片思い。
それでも、帰省の時とか、クリスマスパーティーの時とかには、この一年での前進を少しは理解してもらえてるはずだし、稔や那美さんあたりががそんなことは……と瞬時にいろんなことが頭をよぎったが、その真ん中に、食堂で話をした時の幸ちゃんの言葉が浮かんできた。
「それに、幸の方が、和人くんのこと、好きだとおもうなぁ」
あの時の嫌な感覚が蘇る。俺はなんて返事をしたんだっけ? 何も言えなかったんだっけ?
例えば、俺の幸せを願って、とか。
10年経っても相思相愛になれない相手より、最初から気持ちを向けてくれる相手を、って感じで。
……いや、でも、そうだ、それを言うなら淳三郎さんの方こそ。
ゆうかにもっと適切な相手が見つかったとか。それをうちが受け入れたとしたら。俺に他の花嶺をあてがえるとしたら、受け入れたとしてもそんなに不思議ではない。
――どちらにしろ、そういうことになってくると、問題はひとつだ。
ゆうかがそれを、承諾したのかということ。
どちらも間違っているかもしれない。何か他の思惑があるのかもしれない。
だけどやっぱり俺が確かめたいのはそこだった。ゆうかが今この状況をどう思っているか。
まずはそのことだったのだ。
そんなことすら見えなくなっていた。
ダイニングホールを出た俺は早足で自分の部屋へ戻った。扉を開けると制服姿の雄吾がいた。
「あ、おかえり! 雄吾、この間真理子さんからここにかかってきた時の番号、残ってるよな?」
「あ、ああ。履歴を見ればわかると思うが」
目を丸くした雄吾の横を通り抜け、ベッドに座って電話の履歴を確認する。よかった、非通知になってない。おそらく病院の個室の固定電話だ。一呼吸置いてリダイアルのボタンを押そうとすると、雄吾が慌てた声を出した。
「かけ直すつもりか? この間も伝えたが、」
「連絡してくんなって話だろ? そりゃたぶん普通に出てはくれないと思うけど、どうしてもゆうかと話したいんだ」
「真理子さんに賭けるのか」
「……もしかしたら、ゆうかが出てくれるかもとも思ってるけど」
「想像した条件下にあった場合、一人にはさせてもらえていない可能性が高い」
「それでも。何か、何かしないと」
絶対に譲らないつもりで、咎めるような視線を跳ね返す。雄吾がもう一度開きかけた口を、閉じた。
「……もし、それが駄目だったら、稔さんに賭けろ。彼は真理子さんとも通じているんだろう。この状況の中でもっとも微妙な立場だ。俺ならそうする」
「ありがとう」
雄吾がクローゼットの方へ向かうのを確かめ、一拍おいて深呼吸してから、リダイアルのボタンを押した。