私立秀麗華美学園
「お前は正直者すぎる。それは美徳でもあるが、欠点にもなるからな」


しばらく黙っているとため息交じりに兄ちゃんが言った。うるさいな、と思ったけれど口応えはできない。


「まあ今回はいいさ。試したようなものだしな。悪かった。実は、笠井進本人に裏はとれている」

「本人に?」


今は春休みだから、奴がどんな風に過ごしているのかは知ったこっちゃないが、元から実家に帰っていたか、そうでないにしても家の者の手で連絡の取れないところに連れていかれているのだろうと思っていた。


「驚いたことに、本人から連絡があった。どうやら本家の者の手から逃げ出してきたらしい。こちらとしては関わるべきではないというのが本音ではあるが、次男とはいえ要求を無下にするのもそれはそれでというところだ」

「進は……なんて?」

「お前と話がしたいということだった。こちらに向かわせているので、夕方には着くだろう。
お前たちの話は一致するようだが、正直、全面的に信頼してよいものかどうか判断はしかねている。諜報的な意味でだ。なのでこの問題が解決するまで笠井進をあちら側に帰すことはない。本人にも了承させる。
それを前提に、お前が望むなら、対面させてもいいとこちらは考えているが、どうだ」


まさか、進が…………。しかし俺にとっては思いがけない朗報だった。疑念に渦巻いていた胸中は整理できるかもしれない。それに、信頼してよいかどうか判断しかねている人物を俺に対面させるということは、俺に判断が委ねられている部分があることも確認できた。

信用したい。もちろんだ。だけど、軽率にそうはできない。自分の頭で考える。
いつまでも誰かの声を待つだけじゃ何も成長しない。

単純に、今の俺には話し相手が必要だと思った。すがるのではなくて。対等に話せる相手が。


「お願いします」

「…………わかった」


言葉が途切れた後に降ってきた震えるような沈黙に、呼吸を合わせることが難しかった。
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