私立秀麗華美学園
「なるほど、理由はあったんだな……正当性は別として。
でも実権は亡くなるまでお祖父さんが持ってたんだろ? だったらその2年前まではお前の方が贔屓されてるはずじゃ」

「いや、俺の方で言やぁ目をかけられてた、は言い過ぎだな。可愛がられてたってのは孫としてで、家の中で贔屓されることはほとんどなかった。
なんてったって、あっちは長男だしな。それに育ってみりゃ、あいつはれっきとした天才肌だった。案外じーさんも、選択間違えたと思ってたんじゃねーか」


天才肌、はどうやら否定のしようもないようだが、その兄の価値に匹敵するような努力を弟は積んできたはずだ。……少なくとも、俺よりは遥かに。
そういうことを伝えたい気もしたが、残念ながら余裕がない。


「わかった。今の話も頭に入れとく。
プロジェクトの話に戻るが、堂本とか三松って名前に聞き覚えないか? ゆうかや俺たち、学園に連れて来られた生徒に話を聞いたことがあるんだ。
聞く限り、非人道的な手段も厭わないようだった。金に物を言わせて、ってやり方だ」

「三松……C組の三松あやかだな。楽器が得意だって子だ。覚えてる。その子が一番最近聞いた生徒のような気がするな……。
俺が言うのもなんだが父親はそういう人間だ。自分の思い通りに事を運ぶためならなんでもやる。ただそのプロジェクトの目的だが、遺伝子がどうのこうのとか言ってたよな」


さすが、女子のことなら数年前の記憶でも残ってんだな、とは口に出さずにうなずいた。堂本については触れもしなかったがこの際どうでもいい。


「優秀な遺伝子を集めて研究してるって感じの噂だった。デマかなんかだったらしいけど、一瞬クローンとかいう単語も出てきた」

「そこがしっくりこない。遺伝子研究ってことは、それを人造するとか複製して利用するって話だろ? 父親は理系畑じゃねぇし、現実主義者だ。そんな途方もない話に投資するとは思えない…………まあ、俺の憶測の信憑性なんて知れてるな。金になるならなんでもいいのかもしれない」


進は納得のいかない様子だったが、そのことを追究している場合ではなかった。直面している、俺にとっての最大の問題の前では全てが瑣末なことに思えてきてしまう。
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