私立秀麗華美学園
「悪いけど、正直言って笠井が汚い手で何をしようとしてるかなんて、今はどうでもいいんだ。俺が考えたいのはどうすればゆうかが戻ってくるかってことだけで」

「……そりゃ、そうだろうな」


お互いに立ったままで緊張を持って話をしていたことに気づき、進は中央のテーブルに腰かけ、俺は壁際のソファーに座った。進がジャケットを脱いでベッドに放り投げる。


「誘拐したってのもなあ……そこまでするかって思ったんだが……中身がどうあれ自らの権力を誇示したいってとこに結び付けるのが一番しっくりくるな。プロジェクトの話にも通じるが。
気になってんのが、さっきお前が言ってた、月城と花嶺を一緒に考えんなって話なんだが、説明してはもらえるんですかね」


もとよりそのつもりだったので、昨日、親父から明かされたことを話す。ゆうかと俺は、厳密には婚約者同士ではなかったということ。この件の最高責任者である兄貴は、「切り捨てるべきだ」という結論を出しているということ。

話して、相談しようというのとは違った。いつも雄吾にしているのと同じように進相手にできるわけはないし、例えばここに雄吾がいたとして、俺はいつもと同じように人に頼ってるだけではだめなのだ。いつまでも、人に指された方向に舵を取っていては。
だけど一人での旅路は辛いし寂しいし、絶対に上手くいかないと思っている。だから、俺が言わなきゃいけないことは。


「…………協力して欲しい」


結びで言った時、悲痛な面持ちで話を聞いていた進が顔を上げた。


「まだ何も具体的なことは見えて来ない。希望も見えない。でも俺が望んでることははっきりしていて、そのためだったらどんなことでもやってしまうと思う。
でも一人じゃきっとできない。お前もお前で相当な覚悟を持ってここにいるんだろうけど、俺も同じような覚悟を持ってるって言えるかもしれない。だから協力して欲しい。友人として頼む」

「俺にできることがあるなら。どうせもう、後戻りはできない」


素早い返事にいっそう安心を覚える。それから俺はテーブルの方に移って、考えていることをひとつずつ話していった。

やっぱりひとり頭の中で考えているのと、人に説明するため言葉にするのとでは、頭の使い方も違うし、改めて口に出すと足りないところが見えて整理ができる。
月並みだけど、1たす1は2じゃないんだなという感覚。非常事態にこそ得られる実感もあるということを感じつつ、そういう、感じたこと全てを、ゆうかに話せる時が来ることを祈りながら、説明を続けた。
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