私立秀麗華美学園
「明日にしようかと思ったが、今は時間が惜しいだろう。実はお前と面会したいという友人が来ている。大盤振る舞いだ。今、会わせてやることにした。
夜中まで使える部屋を用意してもらうが、無理はするなよ。あ、それと」
立ち上がりドアを向かったところで兄ちゃんが振り返る。
「メールで、世間話を装って笠井家次男失踪の件について触れられていた。お前らの関係が笠井当主の中でどういう認識であるかはわからないから、どの程度疑われているかも謎だがな。存じないという返事をするつもりだ。今のところ」
進が無言で深く頭を下げる。次男を突き返すことも可能なのだ。当主の機嫌を取りたきゃ、むしろその方がいいかもしれない。そうはせずかくまってくれているというのは、進の覚悟に報いているのか、俺に対する温情なのか。
「関係断つのを断るってんなら、それを花嶺に伝える方法も込みでだからな……まあ、その場合は今度はそいつが『切り札』ってことになるんだろうけどな」
そいつ、と進を示して、兄ちゃんは部屋を出て行った。いろいろと、優しすぎるんじゃないかとさえ思った。
気になった「友人」に関しては、嬉しいことに思った通りだった。数分後に進と共に案内された部屋には、2人の人間が待っていた。
「雄吾、咲!」
2人は部屋へ入るなり駆け寄ってきて「心配した」と口ぐちに言ってくれた。俺はなんとか笑って見せた。この2人を相手に強がる必要はないが、自分自身が足元をはっきりさせておくためだった。
「心配おかけしてます。あと、これからもおかけします。こんなとこまで来てくれてありがとう……ほんと、ごめんな」
「こっちこそ勝手に来てごめんな? 事情わからんかったけどゆうか関連やと思ったからいてもたってもいられんで」
「まさか、すんなり会わせてもらえるとは思わなかったが」
寮を出てくるときも、機密事項ということで雄吾には何も言えなかった。ただ家のことで問題があって、迎えが来るとだけ。それで察してくれていた。
丸テーブルの部屋だったので4人で席につく。会談の態勢だ。
進がここにいる事情については、2人は既に説明を受けていたらしい。嫌な顔はしなかった。
「今起こっていることの概観も、俺たちは一応把握している。和哉さんから直々に説明を受けた。
……だからこそ言うが、俺たちは和人やゆうかの友達として、心配して様子を見に来たかっただけだ。本来、こんな場が設けられることは想像していないし、わかっているとは思うが、とてもじゃないが深く立ち入りができるほどの立場ではない」
「うん。わかってる。俺だってむやみに2人を巻き込みたくはない。どっちにしろ、これは俺自身が考えなくちゃいけない問題だから」
ただ、いてくれるだけでも心強いから。そう続けると、咲は泣きそうな顔をして、雄吾はうなずいた。
気持ちは痛いほど伝わる。俺たちみたいなひよっこの、わがままが通る世界ではない。
「とりあえず、俺の話、聞いて欲しい。意見するのがまずいと思ったら聞いてくれるだけでもいい。たぶん口に出すことで、整理がつくから」
夜中まで使える部屋を用意してもらうが、無理はするなよ。あ、それと」
立ち上がりドアを向かったところで兄ちゃんが振り返る。
「メールで、世間話を装って笠井家次男失踪の件について触れられていた。お前らの関係が笠井当主の中でどういう認識であるかはわからないから、どの程度疑われているかも謎だがな。存じないという返事をするつもりだ。今のところ」
進が無言で深く頭を下げる。次男を突き返すことも可能なのだ。当主の機嫌を取りたきゃ、むしろその方がいいかもしれない。そうはせずかくまってくれているというのは、進の覚悟に報いているのか、俺に対する温情なのか。
「関係断つのを断るってんなら、それを花嶺に伝える方法も込みでだからな……まあ、その場合は今度はそいつが『切り札』ってことになるんだろうけどな」
そいつ、と進を示して、兄ちゃんは部屋を出て行った。いろいろと、優しすぎるんじゃないかとさえ思った。
気になった「友人」に関しては、嬉しいことに思った通りだった。数分後に進と共に案内された部屋には、2人の人間が待っていた。
「雄吾、咲!」
2人は部屋へ入るなり駆け寄ってきて「心配した」と口ぐちに言ってくれた。俺はなんとか笑って見せた。この2人を相手に強がる必要はないが、自分自身が足元をはっきりさせておくためだった。
「心配おかけしてます。あと、これからもおかけします。こんなとこまで来てくれてありがとう……ほんと、ごめんな」
「こっちこそ勝手に来てごめんな? 事情わからんかったけどゆうか関連やと思ったからいてもたってもいられんで」
「まさか、すんなり会わせてもらえるとは思わなかったが」
寮を出てくるときも、機密事項ということで雄吾には何も言えなかった。ただ家のことで問題があって、迎えが来るとだけ。それで察してくれていた。
丸テーブルの部屋だったので4人で席につく。会談の態勢だ。
進がここにいる事情については、2人は既に説明を受けていたらしい。嫌な顔はしなかった。
「今起こっていることの概観も、俺たちは一応把握している。和哉さんから直々に説明を受けた。
……だからこそ言うが、俺たちは和人やゆうかの友達として、心配して様子を見に来たかっただけだ。本来、こんな場が設けられることは想像していないし、わかっているとは思うが、とてもじゃないが深く立ち入りができるほどの立場ではない」
「うん。わかってる。俺だってむやみに2人を巻き込みたくはない。どっちにしろ、これは俺自身が考えなくちゃいけない問題だから」
ただ、いてくれるだけでも心強いから。そう続けると、咲は泣きそうな顔をして、雄吾はうなずいた。
気持ちは痛いほど伝わる。俺たちみたいなひよっこの、わがままが通る世界ではない。
「とりあえず、俺の話、聞いて欲しい。意見するのがまずいと思ったら聞いてくれるだけでもいい。たぶん口に出すことで、整理がつくから」