私立秀麗華美学園
咲が少し心配そうな視線を送っていることに気づき、「もともと腹は括ってここまで来ているからね」と仮面紳士が笑いかける。「普通にしたらええのに」と言われると、これが普通だよ? みたいな顔で微笑んでいる。
仮面は壁で、こいつにとって何よりの処世術だったということを、今更実感する。
とにかく最低限の準備と足がかりはできた、ことになった。
「あとは、どうやって淳三郎さんたちを説得するか、って問題だけだ」
「だけ、やけどなあ」
「話を聞いて初めに思ったが、手を切りたいという連絡が自発的なものなのか強制されたものなのかによって話は変わる。和人はどう考えている?」
「俺は……強制されたものだったらいいなと思ってる。希望的観測を除くと難しいけど、でも自発的だったとしてもこっちのためを思ってのことだと信じてる……いや、信じたい、かな」
「自発的やったら花嶺を説得しなあかんけどさ、強制されてんやったら笠井の方を脅しちゃえばええんちゃうん?」
「いやそもそも、兄ちゃんは月城として笠井ともめるのを避けたいんだよ。進がこっちにいるってわかった時に人質にとって交渉みたいなことも考えたけどまず兄ちゃんに認めてもらえない」
「おま、それ、初耳だぞ、結構えげつないこと考えてたんだな」
「冗談だけど。半分」
でもそれが可能で有効だったらやってただろうなと思う。背に腹は代えられない。
「じゃあどっちにしろ頑張って説得するしかないってことやん」
「そうなるよな」
「和人。聞いておくが、自発というのはゆうかのご両親の意思ということでいいのか?」
「どういうことだ?」
「手を切ってくれというのが、ゆうか自身の意思も込みだった場合だ。ゆうかが意思表示できる状況かどうかはおいておいて、その場合でもお前は、それを無視して両親を説得しにいくのか?」
瞬時に答えることはできなかった。確かに、それによって俺が取るべき行動は違うかもしれない。
「……じゃあそこに、ゆうかの意思も含まれていたとして、どう思う?」
「え?」
「ゆうかは何を考えていると思う?」
「良い機会だからこれっきりにしましょう」
「っていうのだけは、俺もさすがにないと思ってる」
すかさず一番あって欲しくない可能性を口にした進に続いて、俺は断言した。進も進で反論はしない。
「普通に考えれば、お前まで巻き込みたくはない、ということになるか。自分が影響して冷ややかになっていた笠井との関係が改善してきたところに、水を差すのを控えたいということも考えられる」
なるほど、と思った。ゆうかが俺たちのことをどのように見ていたかはわからないが、そういう気持ちが働いたということは、考えられないわけではない。第三者視点からよく思いつくものだ。
しかし、咲はそうは思わなかったらしい。
「あたしは、違うと思う」
仮面は壁で、こいつにとって何よりの処世術だったということを、今更実感する。
とにかく最低限の準備と足がかりはできた、ことになった。
「あとは、どうやって淳三郎さんたちを説得するか、って問題だけだ」
「だけ、やけどなあ」
「話を聞いて初めに思ったが、手を切りたいという連絡が自発的なものなのか強制されたものなのかによって話は変わる。和人はどう考えている?」
「俺は……強制されたものだったらいいなと思ってる。希望的観測を除くと難しいけど、でも自発的だったとしてもこっちのためを思ってのことだと信じてる……いや、信じたい、かな」
「自発的やったら花嶺を説得しなあかんけどさ、強制されてんやったら笠井の方を脅しちゃえばええんちゃうん?」
「いやそもそも、兄ちゃんは月城として笠井ともめるのを避けたいんだよ。進がこっちにいるってわかった時に人質にとって交渉みたいなことも考えたけどまず兄ちゃんに認めてもらえない」
「おま、それ、初耳だぞ、結構えげつないこと考えてたんだな」
「冗談だけど。半分」
でもそれが可能で有効だったらやってただろうなと思う。背に腹は代えられない。
「じゃあどっちにしろ頑張って説得するしかないってことやん」
「そうなるよな」
「和人。聞いておくが、自発というのはゆうかのご両親の意思ということでいいのか?」
「どういうことだ?」
「手を切ってくれというのが、ゆうか自身の意思も込みだった場合だ。ゆうかが意思表示できる状況かどうかはおいておいて、その場合でもお前は、それを無視して両親を説得しにいくのか?」
瞬時に答えることはできなかった。確かに、それによって俺が取るべき行動は違うかもしれない。
「……じゃあそこに、ゆうかの意思も含まれていたとして、どう思う?」
「え?」
「ゆうかは何を考えていると思う?」
「良い機会だからこれっきりにしましょう」
「っていうのだけは、俺もさすがにないと思ってる」
すかさず一番あって欲しくない可能性を口にした進に続いて、俺は断言した。進も進で反論はしない。
「普通に考えれば、お前まで巻き込みたくはない、ということになるか。自分が影響して冷ややかになっていた笠井との関係が改善してきたところに、水を差すのを控えたいということも考えられる」
なるほど、と思った。ゆうかが俺たちのことをどのように見ていたかはわからないが、そういう気持ちが働いたということは、考えられないわけではない。第三者視点からよく思いつくものだ。
しかし、咲はそうは思わなかったらしい。
「あたしは、違うと思う」