私立秀麗華美学園
稔の言ったことは的外れではなかった。と、いうか、稔の言葉によってそれは明確な一つの案の形を成し始めた。
根本的に。切り札。自分で考えなければいけないこと。
全てを完全に、一つの憂うる隙も与えず、解決する方法なんていうのは現実にはなかなか存在しない。
身体が疲れても栄養ドリンクに依存してはいけないと同じように、対処療法は良い結果を生まない。手っ取り早く手に入れた安心は脆く、より大きくなった不安だけを残して崩れ去る。
本物を手に入れるためには長期的な計画が必要だ。
例え完璧にやったと思っていても付きまとう不安を取り除くには、一つ一つの構成要素を信頼できるものに挿げ替えてしまうこと。
その作業が大変でも、はじめは上手くいかなくても、きっと上手くいくと信じて進み続けることができる。
俺にとっては人生がかかっている。目指すのは、一瞬の満足ではなくて、最終的なハッピーエンドだ。
疲れてはいたがどうしても眠る気にはなれなくて、夜景を見ながらそうして考え事をしていた。
時刻が夜中の3時を回った頃だった。部屋の扉が控え目にノックされるのが聞こえた。
進か雄吾かと一瞬思ったが、誰の目もなく会えるとは考えにくい。こっそり抜け出して来たのか? 不思議に思いながら扉の近くに行って返事をした。
「和人、起きているか?」
「……親父?」
慌てて扉を開く。声の通り、そこにはスーツ姿の親父が立っていた。
「ど、どうしたんだよ」
「やっぱり起きていたか。どうせ眠れないなら、どうだ、少し、話をしないか」
「そりゃ、いいけど」
親父に促され、キーを取って部屋を出る。どうやら他には誰もいないようだった。ひやりとした静寂に満ちた廊下を進むのをついて行くと、親父はエレベーターに乗り込んだ。
お互いに黙ったままで到着したのは、ゆうかと初めて出会った、あのラウンジだった。
ガラス張りの一面には、俺の部屋から見たのとはまた少し違った角度の夜景が映っている。
夜景が見える向きに備え付けられた巨大な半円のテーブルと並んだスツール。真ん中に生えた柱は棚になっており、様々なお酒の瓶が並んでいる。
今は誰もいないが、バーテンダーが作業をするスペースも十分にとられていた。
「こんな場所だったっけ」
ホテルに来てから、ここには来ていなかった。いろんなことを思い出してしまう気がして。
おぼろげな記憶の中の姿とはまた違っていた。そりゃそうか、あの時俺は8歳とかだったんだ。
「変わっていないよ。マスターもあの時のままだ。
お前と酒が飲めるのは、あと2年半後か。あっという間かもしれないなあ」
言いながら、親父はカウンターの内側に回って足元からミネラルウォーターを取り出し、2人分をグラスにそそいだ。
よく冷やされていたグラスは見る間に汗をかいて、伝い落ちた水滴がカウンターの上で丸く揺れた。
根本的に。切り札。自分で考えなければいけないこと。
全てを完全に、一つの憂うる隙も与えず、解決する方法なんていうのは現実にはなかなか存在しない。
身体が疲れても栄養ドリンクに依存してはいけないと同じように、対処療法は良い結果を生まない。手っ取り早く手に入れた安心は脆く、より大きくなった不安だけを残して崩れ去る。
本物を手に入れるためには長期的な計画が必要だ。
例え完璧にやったと思っていても付きまとう不安を取り除くには、一つ一つの構成要素を信頼できるものに挿げ替えてしまうこと。
その作業が大変でも、はじめは上手くいかなくても、きっと上手くいくと信じて進み続けることができる。
俺にとっては人生がかかっている。目指すのは、一瞬の満足ではなくて、最終的なハッピーエンドだ。
疲れてはいたがどうしても眠る気にはなれなくて、夜景を見ながらそうして考え事をしていた。
時刻が夜中の3時を回った頃だった。部屋の扉が控え目にノックされるのが聞こえた。
進か雄吾かと一瞬思ったが、誰の目もなく会えるとは考えにくい。こっそり抜け出して来たのか? 不思議に思いながら扉の近くに行って返事をした。
「和人、起きているか?」
「……親父?」
慌てて扉を開く。声の通り、そこにはスーツ姿の親父が立っていた。
「ど、どうしたんだよ」
「やっぱり起きていたか。どうせ眠れないなら、どうだ、少し、話をしないか」
「そりゃ、いいけど」
親父に促され、キーを取って部屋を出る。どうやら他には誰もいないようだった。ひやりとした静寂に満ちた廊下を進むのをついて行くと、親父はエレベーターに乗り込んだ。
お互いに黙ったままで到着したのは、ゆうかと初めて出会った、あのラウンジだった。
ガラス張りの一面には、俺の部屋から見たのとはまた少し違った角度の夜景が映っている。
夜景が見える向きに備え付けられた巨大な半円のテーブルと並んだスツール。真ん中に生えた柱は棚になっており、様々なお酒の瓶が並んでいる。
今は誰もいないが、バーテンダーが作業をするスペースも十分にとられていた。
「こんな場所だったっけ」
ホテルに来てから、ここには来ていなかった。いろんなことを思い出してしまう気がして。
おぼろげな記憶の中の姿とはまた違っていた。そりゃそうか、あの時俺は8歳とかだったんだ。
「変わっていないよ。マスターもあの時のままだ。
お前と酒が飲めるのは、あと2年半後か。あっという間かもしれないなあ」
言いながら、親父はカウンターの内側に回って足元からミネラルウォーターを取り出し、2人分をグラスにそそいだ。
よく冷やされていたグラスは見る間に汗をかいて、伝い落ちた水滴がカウンターの上で丸く揺れた。