私立秀麗華美学園
部屋に戻って、少しは眠ろうと思ったが、無理だった。
シャワーだけ浴びて、昨日と同じモーニングコールに出る。

少しするとみのるがやってきた。どうするか、と聞かれる。


「選択肢の広い質問だなあ」

「では、まずどなたと会われますか」


急に狭まった問いはしかし、俺の表明したい要求に沿ったものだった。


「進に、話がある」







期限は1日と言われた。今日の夕方頃までには決定しなければならない。
午前7時。進への話は相談であり、決意表明であり、確認だった。


「今言ったことを、兄ちゃんに話そうかと思ってる」


目の前の男は視線を伏せた。もう1年半も前になる。ゆうかを救った救世主。
敵わない恋敵だった相手とこんな関係になるなんて、一体誰が予想できただろう。


「仕方ねえな」


にやりと、片方の口の端をつりあげて笑う。以前は見るのも嫌だった顔から、今では細かいニュアンスまで読み取れるようになってしまった。不安、虚勢、少しの闘志。


「……そういうことになると、てめーの兄貴もだが、鍵は花嶺夫妻の信用を得られるかどうかだな」

「ああ、それと、ゆうかも」

「そりゃ、それがなけりゃ、そもそもこんな計画立ててる努力も時間も無駄になる……」


その時、部屋にあった電話が鳴った。出ると、相手はホテルのスタッフだった。話し中に悪いが予定外のことが起こったのでキリのいいところで地下の応接室に来るようにということだ。


「予定外のこと……?」

「なんか、緊急事態ってほどでもなさそうだったけど。兄ちゃんからの言伝てでもないみたいで。どう伝えるか迷ってる風だった」

「何にしろ良い想像は湧かねえが」


キリのいいところでと言われても気になって集中できなかったので、俺たちはすぐに部屋を出た。
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