私立秀麗華美学園
事態が飲み込めない兄ちゃんから封筒を奪う。開いて中身をのぞきこむ。

平たく、薄い色をした何かが入っていた。


「…………花?」


滑らせるように取り出して、手のひらに乗せる。それは小さな白い花だった。細い茎と葉っぱもついている。水分を失ってはいたけれど綺麗な形を保っていて、意図的に押し花にされたもののようだった。


「これが貼ってあったのか?」

「たぶん……こっちにも少しだけど、のりみたいなものがついてる」


差出人、のところに貼り付けられた花。真ん中が黄色くて、白くて細い花びらがたくさんくっついている。
この、花は…………


「どういうこと? 花嶺やから花ってこと? ゆうか差出人なんはわかってるやん」

「花言葉とかなんじゃねえか? ゆうかは花に詳しかったんだろ?」

「それには花の名前がわからければ……見たところ、これは……ハルジオンか?」

「………………違う」


小さい頃から植物園を連れまわされていた。花が大好きで、たくさんの知識を持っていて、楽しそうに花の話をするゆうかが俺は大好きだった。
春に咲く花。秋に咲く花。珍しい色の花。珍しい名前の花。それに、よく似た花の見分け方。

何度も教えてもらっていた。一番最近聞いたのは確か、前期の学園祭の時。薔薇園で零さんに会って、学園の名前を知ることになる、少し前。2人でまわっていて、中庭のベンチに座っていた時に、足元に生えているそれに気づいた。


――見分け方だろ。教え込まれた記憶はあるけど、教え込まれた記憶しかない。

――すごいね。じゃあ、今度は覚えて。


ハルジオンとよく似た花がある。どっちも同じ時期に咲く花で、よく見てみなければ違いはわからない。

確か、花びらや茎で見分けるのだ。手折られ乾燥したこの状態の花では、確実なことは言えない。けれど、断言できた。この花は、ハルジオンではなくて。


「ヒメジオンだ」


はっと、息をのむような気配があった。差出人の代わりに添えられていたヒメジオン。わざわざこんなことをするからには、手紙はきっと書かされたもの。もしくは、書かせて欲しいと申し出たのだろう。

どっちにしても内容は関係ない。伝えたかったのはただこのことだけ。


「――兄ちゃん、話したいことがある」


一瞬だった。腹を括るのに十分なことだった。


俺のところに、ヒメからの、手紙が届いた。
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