私立秀麗華美学園
「……猶予までにはまだ時間があるが」
「今でいい。もう決定した。やるなら早い方がいいし」
「なるほど。それなら聞かせてもらおう」
兄ちゃんは手近な椅子に座って脚を組んだ。とたんに距離が生まれる。話を聞いてやる者、聞いてもらう者。
声を出すため肺に空気を入れる音すら聞こえてきそうな緊張感の中、口を開く。
「花嶺との関係を切ることを受け入れます、一旦。
花嶺は笠井の傘下に。そして俺たちは例のプロジェクト、笠井の暗い一面を握りつぶす。
笠井を敵に回すことはないし素知らぬ顔をしていれば、起こった出来事は、うちが花嶺と繋いでいた手を離した、ただそれだけです」
「それはまさに、我々の理想とするところだな」
「うん、もちろんそれだけではなくて。進には、なんとかして元通り家に帰ってもらいます。逃げたんじゃなくてさらわれたとか。もちろんうちとは何の関係もない形で」
「多少の無理はあるができないことじゃない。しかし辛いのは本人なんじゃないか? 疑いも残るだろうし、今まで以上に不遇と言われる立場に」
「わかってます」
食い気味に後ろから飛んできた言葉。
兄ちゃんはあごを少し上げてゆっくりとまばたきをする。ひとつひとつに対しての反応を確かめるより先に、結論を述べてしまいたい。
「ただ戻ってもらうだけじゃない。進には更なる覚悟を背負って帰ってもらう。
俺は、ゆうかのこと、進に預けるつもりで関係を切ることにした。そして、時が来たら返してもらう。
……進には、笠井家の当主を目指してもらうことになった。
そして、俺は兄ちゃんや親父を含めて、全力でそれをバックアップする体制を作るつもりでいる。
うちだけじゃない。使えるだけ人脈使って、場合によってはプロジェクトの話も使って、反現当主の勢力作り上げて、その時になったら暗い部分を全部切り捨てた新しい笠井グループが誕生する。
その時のリーダーが、ここにいる進で、花嶺は拘束を解かれた状態になってるはずだ」
「…………反現当主勢力、か」
思いあたるところはあるような顔だった。当然だ。
笠井の現当主への心象がいいわけはない。しかし存在も丸ごと無視できるほど、彼らのやっていることの影響力は小さくない。
もし、それを、こちらとうまく意思疎通ができるもの――内通者がトップに立って、陣取ってしまえるとしたら。
「今でいい。もう決定した。やるなら早い方がいいし」
「なるほど。それなら聞かせてもらおう」
兄ちゃんは手近な椅子に座って脚を組んだ。とたんに距離が生まれる。話を聞いてやる者、聞いてもらう者。
声を出すため肺に空気を入れる音すら聞こえてきそうな緊張感の中、口を開く。
「花嶺との関係を切ることを受け入れます、一旦。
花嶺は笠井の傘下に。そして俺たちは例のプロジェクト、笠井の暗い一面を握りつぶす。
笠井を敵に回すことはないし素知らぬ顔をしていれば、起こった出来事は、うちが花嶺と繋いでいた手を離した、ただそれだけです」
「それはまさに、我々の理想とするところだな」
「うん、もちろんそれだけではなくて。進には、なんとかして元通り家に帰ってもらいます。逃げたんじゃなくてさらわれたとか。もちろんうちとは何の関係もない形で」
「多少の無理はあるができないことじゃない。しかし辛いのは本人なんじゃないか? 疑いも残るだろうし、今まで以上に不遇と言われる立場に」
「わかってます」
食い気味に後ろから飛んできた言葉。
兄ちゃんはあごを少し上げてゆっくりとまばたきをする。ひとつひとつに対しての反応を確かめるより先に、結論を述べてしまいたい。
「ただ戻ってもらうだけじゃない。進には更なる覚悟を背負って帰ってもらう。
俺は、ゆうかのこと、進に預けるつもりで関係を切ることにした。そして、時が来たら返してもらう。
……進には、笠井家の当主を目指してもらうことになった。
そして、俺は兄ちゃんや親父を含めて、全力でそれをバックアップする体制を作るつもりでいる。
うちだけじゃない。使えるだけ人脈使って、場合によってはプロジェクトの話も使って、反現当主の勢力作り上げて、その時になったら暗い部分を全部切り捨てた新しい笠井グループが誕生する。
その時のリーダーが、ここにいる進で、花嶺は拘束を解かれた状態になってるはずだ」
「…………反現当主勢力、か」
思いあたるところはあるような顔だった。当然だ。
笠井の現当主への心象がいいわけはない。しかし存在も丸ごと無視できるほど、彼らのやっていることの影響力は小さくない。
もし、それを、こちらとうまく意思疎通ができるもの――内通者がトップに立って、陣取ってしまえるとしたら。