私立秀麗華美学園
「小学2年の頃までは、年に1度は必ず来てた。夏休み、父親も兄貴もいて家に居づらかった時。じーさんとこ逃げて、連れられて来た。塾に通い始めてからはそうもいかなかった」
木々の茂る小道を抜けたところに、旅館はあるということだった。車の通用口もあるが見つかりかねない。傾斜のついた道のふもとに置いてきて、目立ってはいけないということでみのるたちも待っていてもらうことにした。
緩い坂を登りきると本館が見えたが、別館はそこから更に階段を上がるということだった。途中まで上がり、真ん中あたりからは道なき道を行って、見つからないように裏手に回ることにした。
「最後に来たのは小学6年の冬休みだ。俺は中等部から学園に入った。寮がある学校で本当によかったと思ったよ」
前を行き、方向を確かめながら歩く進は、声を低めて昔話をする。傾斜を進みながら、進の時間だけが当時に遡るようだった。
「長期休暇、寮で過ごしてたのか」
「ほとんどな」
「どうせ一人部屋だよな」
「もちろん」
「友達もいないのに」
「……勉強と自主練、あとは清い男女交際」
「…………ほんとに、俺よりいないんだな……部活入ってるくせに……主将のくせに……」
「クラブメイトはライバルだ」
「特定の彼女は?」
「なんの詮索だよ」
「投資相手の情報収集」
「……特定の、はいねえよ。俺がゆうか見つけたのは入ってすぐだった」
「ってことは俺たち中1の時同じクラスだったのか」
「ちげーよ委員会だよ。お前何にも覚えてねえんだな」
本当に覚えていなかったで、ふうん、とか言いつつ、刺さったのは「ゆうか見つけたのは」って言葉だった。
もし、このまま花嶺が笠井の傘下に入ったら。ゆうかは婚約者がいなくなるし、進にとっては以前より格段に近くなるわけだし。思い出してみれば1年前は両思いに近かった人たちだし。
「俺が紹介しようか、とか言えたらいいんだけどなー」
「は? 女? 何様だよいらねえよこっちはよりどりみどりだっつーの」
建物らしきものが木々の隙間から見え隠れし出して、俺たちは口を閉じた。一歩一歩の運びにも神経を使い始める。
ぱっと見は洋館のようだったが、裏手には確かに縁側らしきものがある。全体的に暗い色をしていて、窓も少ない。
守りは完璧、という感じだ。
木々の茂る小道を抜けたところに、旅館はあるということだった。車の通用口もあるが見つかりかねない。傾斜のついた道のふもとに置いてきて、目立ってはいけないということでみのるたちも待っていてもらうことにした。
緩い坂を登りきると本館が見えたが、別館はそこから更に階段を上がるということだった。途中まで上がり、真ん中あたりからは道なき道を行って、見つからないように裏手に回ることにした。
「最後に来たのは小学6年の冬休みだ。俺は中等部から学園に入った。寮がある学校で本当によかったと思ったよ」
前を行き、方向を確かめながら歩く進は、声を低めて昔話をする。傾斜を進みながら、進の時間だけが当時に遡るようだった。
「長期休暇、寮で過ごしてたのか」
「ほとんどな」
「どうせ一人部屋だよな」
「もちろん」
「友達もいないのに」
「……勉強と自主練、あとは清い男女交際」
「…………ほんとに、俺よりいないんだな……部活入ってるくせに……主将のくせに……」
「クラブメイトはライバルだ」
「特定の彼女は?」
「なんの詮索だよ」
「投資相手の情報収集」
「……特定の、はいねえよ。俺がゆうか見つけたのは入ってすぐだった」
「ってことは俺たち中1の時同じクラスだったのか」
「ちげーよ委員会だよ。お前何にも覚えてねえんだな」
本当に覚えていなかったで、ふうん、とか言いつつ、刺さったのは「ゆうか見つけたのは」って言葉だった。
もし、このまま花嶺が笠井の傘下に入ったら。ゆうかは婚約者がいなくなるし、進にとっては以前より格段に近くなるわけだし。思い出してみれば1年前は両思いに近かった人たちだし。
「俺が紹介しようか、とか言えたらいいんだけどなー」
「は? 女? 何様だよいらねえよこっちはよりどりみどりだっつーの」
建物らしきものが木々の隙間から見え隠れし出して、俺たちは口を閉じた。一歩一歩の運びにも神経を使い始める。
ぱっと見は洋館のようだったが、裏手には確かに縁側らしきものがある。全体的に暗い色をしていて、窓も少ない。
守りは完璧、という感じだ。