私立秀麗華美学園
しかしなぜだか進は歯切れの悪い物言いだった。


「……本当ですか」

「ええ。お顔が見られて安心したわ」

「愛さん、ありがとうございます。出てきてくれたのが愛さんでよかったです」

「やっぱりさっきの物音は、進ちゃんたちだったのね。大丈夫よ。告発したりなんて致しませんから。それで、頼みたいことって?」

「あの、えっととりあえず、ここに、花嶺淳三郎さんご夫妻はいらっしゃいますか?」

「ええ、いらっしゃるわ。秘匿事項だと言われているけれど。あら、そっか確か、和人くんは花嶺さんの娘さんとご関係が……」


そして俺たちは今までのことを簡単に説明した。愛さんを始めとするここの従業員たちは、花嶺夫妻をここに隔離するようにと、進の父親からの指示を受けたらしい。誰にも会わせないように、言われているのはそれだけだそうだ。
そして、ここにゆうかはいないらしい。


「進ちゃん、男の子の友達ができたのね。それはとってもよかったわ」

「別に友達……いやまあいいや、愛さん、それで、僕らは花嶺ご夫妻とお話がしたいんです。どうにか他の人には見つからないように」

「そう……難しいわね。今こちらには見張りの方がたくさんいらっしゃっていて……従業員だけなら、動きもわかるからなんとかなるかもしれないのだけれど」

「それは、何人ぐらい?」

「そうね、ええっと……少しお待ちいただける? 確認して戻ってくるわ」

「お願いします」


建物へ足を向けかけていた愛さんは、進が頭を下げるのを見ると、くすりと笑って顔を覗き込んだ。


「進ちゃん、猫被りは相変わらずなのかしら。それとも本当に大人になったのかな。昔のように愛ちゃんと呼んでくださればよろしいのに」


さらっとそんなことを言って、愛さんは、ハーフアップの髪をなびかせて戻って行った。


「……進ちゃん」

「黙れ」

「あんなに親しそうな相手なのに、妙に渋ってたのはもしかして、猫被りバレてる相手だったからか」

「…………そーですけど」

「お前見る目ねーなー、愛さんぜったいほんとに心配してくれてただろ、ていうか大人でかつ女性の相手に猫被りバレてるってお前何かやらかしたのかよ」

「るっっせーな! だから結局、あの人に賭けただろーが、んで成功だったんだからそれでいいだろ!」

「声がでかい」

「こんな状況でまで味方してもらえる自信がなかったんだよ。昔から世話になってたとはいえ、じーさんはもういないわけだし。大体こんな猫被りを誰が信頼するんだよ」


小声でぶつぶつと、緊張感の和らいだ声で進は言った。自信がなかった。そんな言葉を聞くことになるとは。


「だけど、淑子さん? とか、みんな心配してたって言ってたじゃん、愛さん」

「そーだな、言ってたな愛ちゃん」

「だからきっとその人たちは、笠井の次男としてのお前じゃなくて、笠井進て人間ひとりを見てくれて、親しくしてくれてたんだよ。よかったな」


ところで昔からって愛さんは一体何歳なんだ、と聞くと、少し思案してから、14歳上、と答えが返ってきた。30歳を超えてるらしい。なんとまあ。

姉ちゃんと同年代ぐらいにも見える愛さんは、すぐに小走りで戻ってきた。
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