私立秀麗華美学園
「今日、こちらの従業員は3人だけね。見張りというか、進ちゃんのおうちの人は4,5人いらっしゃってるそうよ。みなさん厳めしい格好をなさって」

「4,5人か……」


たった2階建ての建物に。生半可な警備ではない。月城家側は未だ事を把握していない顔をしているはずだが、やはり警戒されてもいるということか、他にも反発勢力がいるという見立てなのか。


「愛さんの他の従業員は、今何を?」


心なしか「さん」を強調して進は尋ねる。


「ひとりは休憩、ひとりはお二階の備品管理だと思うわ……私は今、お昼食の支度をしていることになっているけれど」

「……食事」


はっとした顔で進は建物を見やり、愛さんの方に振り返る。


「愛さん、お2人がいる部屋って、あの部屋? 障子の戸張りでどこからでも入れると見せかけて、一箇所しか開かない、あの、中に入った人を見張るにはもってこいの」

「ええ、そうですよ。……そういえば、進ちゃんも昔、お仕置きで閉じ込められたことがあったわねえ」

「そう、それでほら、あの時俺、抜け出して」

「ああ!」


合点がいった様子の2人。お仕置きで閉じ込められてた……そんな時代もあったのか、と思うと同時に、淳三郎さんたちが置かれている状況を改めて知る。


「そうだわ。もしかしたらあの場所は、みなさんもご存知ないかもしれないわ」

「あの、一体……」

「その部屋の障子には一箇所だけ、抜け道があるんだ」


進はしゃがみこんで、地面に縦長の長方形を描いた。


「これがその部屋の1枚の障子戸だとすると、格子があって紙が貼ってあるのは上4分の3ほどまでで、それより下は板張りになってるんだ。腰板って言うんだったかな。そこが一箇所だけ、ずっぽり抜けるようになってるんだ」

「どうやらその部屋はその昔罪人を入れておく部屋だったらしくって、食事の盆を出し入れする口だったと後から淑子さんが教えてくださってね……小さい時の進ちゃんったら、たまたま見つけたそこから脱出しようとしたんですよ」

「それは、大人1人通れる大きさなんですか?」

「やすやすとは行かないと思うが、チビでガリで絶望的に肩幅と腰幅の狭いお前なら、いけるかもしれないと思って」

「そうね、和人くんなら大丈夫かもしれないわ!」


初対面の女性にチビでガリで絶望的に肩幅と腰幅が狭いと太鼓判を押された俺は、複雑な気持ちになりながらも、口応えをせずにうなずいた。
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