私立秀麗華美学園
乗船場を離れてから1時間ぐらいが経過していた。今は正面に見えている夕陽が、ほとんど沈みかけている。周囲の景色は夜景に変わろうかというところだ。
春の夜はまだまだ寒い。意外なほどひやりと通り過ぎた風がゆうかの髪を舞い上げた時、肩甲骨の下あたりまで開いた背中に、ミント色のドレスを着た人が抱きついてきた。
「ゆっうかっちゃーん」
「那美さん! もう、びっくりした」
後ろから突然抱きつかれたゆうかは驚いて振り返る。那美さんの頬は薄っすら赤みを帯びていた。お酒はあんまり強くないはずだ。
「……酔い、覚ましますか?」
「もおー。大丈夫よぅこのくらい。ちょっと、ゆうかちゃんに聞きたくってね」
那美さんは片手に花束を持っていた。今朝、俺たちが見ている前でもらっていたものだ。
とても控え目な花束。綺麗な装飾はされているが、メインの白い花以外にはリーフも小花も添えられておらず、花嫁のブーケに気を遣ったものとも考えられる。
「零にもらったやつね。よく見る花のような気はするけど、あいつ、よく考えたら庭師って職業なわけじゃない? なんか、意味あるチョイスなのかなぁって思って。ゆうかちゃん詳しかったよね」
那美さんから花束を受け取り、薄紙をめくって葉を確認したゆうかは、すぐさまその答えを告げた。
「たぶん、マーガレットです。確かによく見る花ではあるけど、考えて選ばれたんじゃないかな…………花言葉のひとつが『真実の友情』です」
「真実の友情…………そっか、なるほど……そうね、きっと、選んでくれたんだ……」
込められた一言を噛み締めるように、那美さんは目を細める。春を予感させるようなドレスの色に、純真な白さの花はよく映えていた。
「友達で、いてくれるのね」
薄く浮かんだ涙を振り払うように頭を左右に振った那美さんは、満面の笑みで人の輪の中へ戻って行った。
春の夜はまだまだ寒い。意外なほどひやりと通り過ぎた風がゆうかの髪を舞い上げた時、肩甲骨の下あたりまで開いた背中に、ミント色のドレスを着た人が抱きついてきた。
「ゆっうかっちゃーん」
「那美さん! もう、びっくりした」
後ろから突然抱きつかれたゆうかは驚いて振り返る。那美さんの頬は薄っすら赤みを帯びていた。お酒はあんまり強くないはずだ。
「……酔い、覚ましますか?」
「もおー。大丈夫よぅこのくらい。ちょっと、ゆうかちゃんに聞きたくってね」
那美さんは片手に花束を持っていた。今朝、俺たちが見ている前でもらっていたものだ。
とても控え目な花束。綺麗な装飾はされているが、メインの白い花以外にはリーフも小花も添えられておらず、花嫁のブーケに気を遣ったものとも考えられる。
「零にもらったやつね。よく見る花のような気はするけど、あいつ、よく考えたら庭師って職業なわけじゃない? なんか、意味あるチョイスなのかなぁって思って。ゆうかちゃん詳しかったよね」
那美さんから花束を受け取り、薄紙をめくって葉を確認したゆうかは、すぐさまその答えを告げた。
「たぶん、マーガレットです。確かによく見る花ではあるけど、考えて選ばれたんじゃないかな…………花言葉のひとつが『真実の友情』です」
「真実の友情…………そっか、なるほど……そうね、きっと、選んでくれたんだ……」
込められた一言を噛み締めるように、那美さんは目を細める。春を予感させるようなドレスの色に、純真な白さの花はよく映えていた。
「友達で、いてくれるのね」
薄く浮かんだ涙を振り払うように頭を左右に振った那美さんは、満面の笑みで人の輪の中へ戻って行った。