私立秀麗華美学園
「――そろそろ、聞こうかなあ」
横顔のゆうかに、今日一日、触れずにいた話題を持ち出す決心をした俺は言う。
「何のお話かしら」
「昨日、一日のこと」
「何があったかなあ」
「俺の知る限りでは……笠井進と、出かけてたんじゃなかったっけ?」
「ただ出かけたんじゃないわよ。デートよ」
あえて、笑顔で、そんな言い方をしてくる小悪魔。――話は、一週間ほど前にさかのぼる。
「ニューヨーク!?」
突然、別の寮からの訪問者という連絡を受け、自分の寮のリビングホールへ行くと、偉そうにふんぞり返って座っていたのは進だった。
自分でも驚くが、その時の「よぅ」とかなんとかいうくぐもった声の交換は、あの日ゆうかが待っていた別館の木蔭で交わした握手以来、俺たちの間での初めてのやり取りだったのだ。
つまり、ネタばらしをされてから俺たちは一言も喋っていなかった。騙されていたもの同士だったが、きまり悪かったし、わざわざ連絡を取ろうという考えがなかった。
そして、いきなりの訪問。どうした風の吹きまわしかと思えば、驚いたことに進は、三年生の四月から半年弱、休学してニューヨークに行くことになったなどと言い出したのだった。
「またなんで……。つーか、お前、こっち戻ってたのか」
「いや、昨日戻った。それまではひっさびさ本邸の自分の部屋で過ごしてた。詳しく話す気はねえけど、まー、有意義だった。社交辞令無しで兄貴と話したのなんて、何年ぶりだったか」
「へー……。ちなみに俺は、あの日の夜にそのままゆうかと二人で逃げ帰ってきました」
「んだよそりゃ自慢か」
「自慢だ」
「あっそ……んで、その間に知らされたのが新規ホテル事業の話だ。向こうのホテルやってる会社と共同で、名前借りて、アメリカでやってくつもりらしいんだが、その下準備っつーか、視察みたいなこと。そのプロジェクトチームに、半年だけ参加させてもらうことになった。大がかりなインターンみたいなもんだな」
「あー、そういう……すげーな。たまにそういうやつもいるけど、半年ってなかなか」
「勉強は向こうで家庭教師つけてりゃそれでいいってよ。授業免除。私立のいいとこですねえ」
「てか、ホテル事業って。思いっきりライバル関係じゃねーかよ。どーせ向こうで成功したら持って帰ってくんだろ」
「そりゃあなあ。だからこそ俺も参加する張り合いがあるって話」
失敗することを願うほど狭量ではいたくないが、大成功されても困るというのが本音。ライバル関係はもうこりごりだ。
横顔のゆうかに、今日一日、触れずにいた話題を持ち出す決心をした俺は言う。
「何のお話かしら」
「昨日、一日のこと」
「何があったかなあ」
「俺の知る限りでは……笠井進と、出かけてたんじゃなかったっけ?」
「ただ出かけたんじゃないわよ。デートよ」
あえて、笑顔で、そんな言い方をしてくる小悪魔。――話は、一週間ほど前にさかのぼる。
「ニューヨーク!?」
突然、別の寮からの訪問者という連絡を受け、自分の寮のリビングホールへ行くと、偉そうにふんぞり返って座っていたのは進だった。
自分でも驚くが、その時の「よぅ」とかなんとかいうくぐもった声の交換は、あの日ゆうかが待っていた別館の木蔭で交わした握手以来、俺たちの間での初めてのやり取りだったのだ。
つまり、ネタばらしをされてから俺たちは一言も喋っていなかった。騙されていたもの同士だったが、きまり悪かったし、わざわざ連絡を取ろうという考えがなかった。
そして、いきなりの訪問。どうした風の吹きまわしかと思えば、驚いたことに進は、三年生の四月から半年弱、休学してニューヨークに行くことになったなどと言い出したのだった。
「またなんで……。つーか、お前、こっち戻ってたのか」
「いや、昨日戻った。それまではひっさびさ本邸の自分の部屋で過ごしてた。詳しく話す気はねえけど、まー、有意義だった。社交辞令無しで兄貴と話したのなんて、何年ぶりだったか」
「へー……。ちなみに俺は、あの日の夜にそのままゆうかと二人で逃げ帰ってきました」
「んだよそりゃ自慢か」
「自慢だ」
「あっそ……んで、その間に知らされたのが新規ホテル事業の話だ。向こうのホテルやってる会社と共同で、名前借りて、アメリカでやってくつもりらしいんだが、その下準備っつーか、視察みたいなこと。そのプロジェクトチームに、半年だけ参加させてもらうことになった。大がかりなインターンみたいなもんだな」
「あー、そういう……すげーな。たまにそういうやつもいるけど、半年ってなかなか」
「勉強は向こうで家庭教師つけてりゃそれでいいってよ。授業免除。私立のいいとこですねえ」
「てか、ホテル事業って。思いっきりライバル関係じゃねーかよ。どーせ向こうで成功したら持って帰ってくんだろ」
「そりゃあなあ。だからこそ俺も参加する張り合いがあるって話」
失敗することを願うほど狭量ではいたくないが、大成功されても困るというのが本音。ライバル関係はもうこりごりだ。