私立秀麗華美学園
公園ひとつ分の広さはあるかと思われる下足室で雄吾たちと別れる。

姫と騎士は常に同じクラスなのだ。今年は、咲と雄吾はC組で、ゆうかと俺はA組だ。


もともとPAK制度とは、家の都合で婚約者同士となった者たちのための制度を正当化させたようなものだ。
『物騒な世の中、男は女を守れるように』
必要とあらば筋骨隆々のボディーガードを何人だろうとつけられるお嬢様方、守らなければいけない理由がどこにあるというのか。

こんな説明を信じているの初等部の頃だけで、中等部にもなれば大人の黒い世界の事情は見えてくる。



「ゆうか」


念のために今朝のことを謝っておこうと、荷物を置いてゆうかのもとへ。


「何?」

「今朝、ごめん」

「今朝? 何か、言ったっけ」


……本気で言っているようだ。頬づえをつき、細い首を傾げて俺を見上げている。


「定刻……」

「ああ、忘れてたわ。あんなの機嫌悪かっただけよ。和人、8時に来たじゃない」


承知はしているが、このお姫様は機嫌によって定刻に来た人間を咎めたりもするらしい。
小さくため息をつくと、ゆうかは可愛らしく微笑んだ。


「あんまり気にしないでよ」


口元がほころび、顔全体に優しい雰囲気が一瞬みなぎる。
あーもー駄目だ。もー遅い。こんな顔を見せられれば、俺は許すしかなくなる。

ゆうかもそれはわかっていて、俺が黙り込むのを見るとすぐに笑顔を引っ込めた。

世に言う「ツンデレ」とは、ゆうかのためにある言葉だと思わずにはいられない。
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