。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
客室を出てすぐのフロアの廊下にホテルマンと思しき男が制服姿でルームサービスなのだろうか、ワゴンを押しながら俺とすれ違うときには一旦止まり、俺を目に入れるときっちりとお辞儀。
なかなか教育がなっているようだ。だてに高級ホテルを謳っているわけではなさそうだ。
今後ホテル業界に進出するのも手かもしれない。
ふい、と顏を逸らしそんなことを考える。やはり俺はすぐに仕事と結び付けてしまう悪い癖があるようだ。
それにしても…
「うーむ、髪型が何か気に入らない。
失礼、鏡を貸してもらっても…」
と、ワゴンを押しているホテルマンを振り向き、すでに振り返っていたホテルマンに俺はそれと同時、勢いをつけた肘を後方へ引き、大して威力もなかったがホテルマンの顎に命中したのか、そいつは後ろに吹っ飛び、ホテルマンが手にして俺に向けていたであろう、銀のナイフが宙で弧を描いた。
それをキャッチして、その側面に自分の顏を映しだす。
「ふーむ、髪型じゃないな。やっぱネクタイか」
とブツブツ言いながら、またもすれ違ったホテルマンを振り向き、今度はそいつのネクタイの裾を掴み、思いっきり腕を引く。ホテルマンはネクタイで絞まった首元を震える手で掴みながら、その場に崩れ落ちる。倒れた際にホテルマンの制服の内側からハジキが転がり出た。
俺はそのホテルマンからスルリとネクタイを抜き取り、自分のと見比べて見て
「ふむ、やはり色はこっちの方がいいかな」と自分のネクタイを軽く締め直す。
「だぁかーらぁ~、ドレスのこと聞かれても俺は何も分かんないんだって」と客室からアロハシャツ姿の若い男が一人スマホを耳に顏をしかめて出てきて
「同感だな。俺も女の服には悩む」
と言うと同時、男がアロハシャツの裾を翻し、ベージュのチノパンからハジキを取り出した。それとほぼ同時に手にしていた…俺はホテルマンを装った刺客のネクタイをそいつの首に素早く回し、強く絞めた。その腕を蹴り上げ、ついでに男の腕の付け根を固め
「いっ!」と男が悲鳴を挙げ、ツレの女が「キャーっっ!」と悲鳴をあげる。
「女の服よりその前に自分のセンスだな、もう少しオシャレをした方がいいのだろうか」と一言言い、アロハシャツの男を壁に叩き付けた。
「とりあえずアロハシャツは俺には似合いそうにないな」
ふん、と鼻息を吐き襟元を正していると同時、アロハシャツの男は震える手で床に転がったハジキに手を伸ばそうとした。俺はそれを蹴り飛ばしハジキは上質な絨毯の上を滑っていった。
「やはり最初はもっとカジュアル路線がいいのだろうか」呟いていると
滑って行ったハジキをパンプスのハイヒールで受け止め、身体のラインに沿った赤いミニ丈のワンピース姿のツシマがハジキをヒールで止めたまま、腕を組み、これまた勝気に
「上のバーはドレスコードやで?
それでええやん」
と笑いながら、ハジキのグリップをつま先だけで持ち上げ、テコの原理でそれを宙に跳ね上げ、見事にキャッチ。
その黒光りする銃口を躊躇なく俺に向けてくる。
ふむ、やはり運命の出会いだったな。
俺は顎に手を置きしみじみ。
「キミの瞳にカンパイ」