。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
俺のすぐ背後で男の笑い声が挙がった。
「おもろいなぁ、この男」と愉快そうに笑う声だけ聞くと俺と同年代のように思える。
しかしその男は、俺を襲ってきた三下とは比べ物にならない遥かに大物。背こそ俺より低いが、それでも漂ってくる殺気は只者ではない。
俺はそろりと両手を挙げた。
何故なら、男が俺の頭に銃口を突きつけているから。
油断していた?
いや、そんなことはない。この男の気配をまるで感じられなかったのだ。
この俺の背後を取るとは、流石だな。
「何や、使えんやっちゃなー、たっかい“チップ”払った言うのに、大損やわ」と女が顔をしかめ、廊下に転がった意識のない男たちを冷めた目で冷ややかに見下ろしていて、
やはりこの女の刺客だったか。
「だてに“黄龍”名乗ってるわけやなさそうやな。心、この男強いで?」
背後の男が薄く笑っている。
両手を挙げたまま軽く肩を竦め
「長身のハスキーボイスの友達?レベルが高すぎて俺には勿体ないな。俺は服のセンスもないし」
と、言うと
「あら、結構ええセンスしてる思うよ?髪型もネクタイもバッチリや。
うちのどストライク♪」
赤いドレスの女が銃口を向けたまま少し背を逸らす。
「奇遇だな、俺もどストライクだ。だが“フリーじゃないと”だとは知らなかったな、悪いことをした」
ちょっと振り返って背後の気配の男を見ると、男はやはり俺と同じ年代の男で、黒いジャケットに黒いパンツ、シャツも濃い目のグレーで、文句なしに似合っていて憎らしいほどセンスがいい。男は、これまたオトコの俺でも色っぽいと思う程の余裕の笑顔を口の端に浮かべていて
「“フリー”やよ?俺ら兄妹や、恋人同士やあらへん」と低く笑う。
「ふむ」
俺はまたも頷いた。両手を挙げたまま、再び前を向き銃口を向けた女にニヤリと笑いかけた。
「ようやく会えたな
白虎の隠し玉、いや“切り札”と言えるかな」
双子の―――…
ツシマ
いや、対馬。
「お前ら医者なんてやめて役者になったら?」
俺が皮肉ると、背後の男が一歩後退したのか拳銃の感触が離れていった。僅かに振り向くと、背後の男はトリガーガード(用心金:不意にトリガーを引くことを防止する安全部品)を器用に指で回しながら、黒いハジキはくるくる回った。
「あかん、戦意喪失や。
だてに“黄龍”名乗ってる男やないなぁ」
とちょっと呆れかえって肩を竦め
「しっかりしいや、これやから男はあかんねん」と言いながらも、赤いドレスの女もハジキを下ろす。