。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
俺は割と早い段階で、この女が“普通”じゃないと気付いていた。「いつから?」と問われればプールに入ってきたとき、からと答えるだろう。
殺気は感じられなかった。悪意もない。ただ、纏うオーラが、
何者でも『なかった』。
目を奪う美人。最初の印象こそ強烈だったが、それだけだ。それ以外、女の背景が浮かんでこない。ミステリアスな美女と言えば聞こえはいいが、謎しかない。
そして、きっとこの女と別の場所で再会しても、すぐに思い出せない程あっさりと記憶から抜け落ちるだろう存在。
はじめてだ、こんな女。
人の記憶に残らない、何者でもない、しかし何者にもなれる。
カタギではない。かと言って筋もんでもない。明らかに毛色が違う人種。
こいつらは
―――“プロの殺し屋”
だ。
万屋と言った本当の意味が分かった。
――
――――
「で?俺に何のようだ」
俺は二人の対馬を伴って、当初予定していた最上階のバーで酒を交わしすことにした。
この時間帯だと言うのに生憎だがカウンターは客たちで埋まっていて、奥まったソファ席を案内された。客たちの数人は先ほどプールパーティーで見た面が揃っている。その誰もが俺たち三人をちらりちらりと気にしているが気付かないフリ。視線を一々気にしていたら体がもたん。
高層ビルの窓から東京の眠らない街、夜になると宝石を散りばめたような輝かしい夜景になるだろうが、生憎今は午後5時。真昼間と言う分けではないが、夕暮時でもない。中途半端な時間が、明るい眼下を少し灰色に染めていた。
それを背に座った俺と、左右のソファに三角形状に座った二人の男女。
「もう一度聞く。白虎の隠し玉……“切り札”がわざわざ出向いてきたワケを知りたい。俺に何の用だ」
注文したダッチジンを一飲みして目だけを上げると、対馬……弟なのか兄なのか分からない、名前も聞いてないし、男の方が口角を上げて「ふっ」と小馬鹿にするように小さく笑った。
ココロの方は…漢字は『心』と書くらしい。
対馬 心―――
その、心の方がスラリと長い脚を組み、ソファの背もたれに腕を乗せ
「虎間のおやっさんがうちらのこと隠してたって?おやっさんが意図して隠してたわけやなく、おやっさんはうちらのこと信用してないだけや」
と皮肉めいて、こちらも赤い唇の口角を吊り上げる。
男の方は速人と名乗り、速人はやや大股に開いた脚に肘をつき前のめりでグラスを傾けていて
「俺らは“フリーランス”やさかい、依頼があればどこへでも飛んでいく。
俺らは“風”や」と低く嗤う。
「風―――……」
「風向き次第でどっちにも“靡く”言う意味や。最初から言うとくけど、うちらのことあんまり信用せぇ方がええよ」
心がまるで他人事の様にからから笑い
「安心しろ、信用はしてない。だが、俺に近づいた理由は知りたい」
俺はグラスを傾け、残ったストレートのジンを一気に飲み干した。