。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
「言うたやろ?取引したい、て」
心はソファの背に腕を置いたまま脚を組み替える。心が脚を組み替える度、白い太ももがちらりと見える、ついついそこに視線が行ってしまうのは―――魅力的、と言うのもあるが、ハジキ以外何かの武器を隠し持っていないか、気になる。
「材料は?」視線を心の顏に戻して聞くと
速人の方が一枚のプリントした写真をテーブルに滑らせた。
「これを高値で買うてくれへん?」言ったのは心の方だ。
俺はその写真を目を細めて眺めた。
写真には古びた紙?のようなものが写っている。その紙に書かれた文字はだいぶ崩してあり、しかもかなり古い時代に書かれたものなのか濃淡のばらつきがある。
文字は線や記号であちこち矢印が走り、何かのフローチャートのように見えた。
家系図?のようにも見えなくはない。
「何だこれは」俺が眉間に皺を寄せると
「うちらも分からへん。けどな“あの男”がこれを探しててん。“依頼”されてうちらが入手したんや」と心が肩をすくめる。
「“あの男”と言うのは?」俺が再び目を上げると
「大狼 恵一」
速人がまたも薄く笑い、バーボンの入ったグラスを傾ける。氷がカランと渇いた音を立てた。バーボンは底が見えかけていた。
俺は再び眉間に皺を刻んだ。
「殺し屋が殺し屋を雇うたぁ、世知辛い世の中だな」
今度は俺が皮肉ると
「せやろ~、ほんま分からんやっちゃであの男は」
「これをどこで?」俺が写真を心の方へスライドさせると
「玄武の縄張りや。奴らもこれを大事に保管しとった。護番みたいなもんが守っとったけど、てんで弱かったわ~準備体操にもならへんかったわ」
はっと心は蓮っ葉な物言いで吐き捨てる。謎めいたセレブ美女から、下町の娼婦に変わった気がしたが、この変わり身が人の印象を左右するのだろう。
「なるほど、玄武も、そしてタイガも“これ”を欲しがった―――俺たちは知らないが、ヤツらにとっては命の次に大事なものだと言えるな」
「せやろ、その写真はあくまでコピーや。原本はとっくにあの男に手渡してある」
「この図は大したことがないが、その原本にカラクリがあるかもしれないぜ?」俺が再び写真を引き寄せ、それをつまみ上げた。
「それも考えた。一応スキャンしてみたけど、何のカラクリもない、ただの紙やった」
速人が答え
ただの紙―――……
紙切れ一枚に、何故タイガは拘るのだろうか。