。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅵ《シリーズ最新巻♪》・*・。。*・。
バーを出る速人のスラリとスタイルの良い背中を見送りながら、面白い男だ、と思った。
「速人なぁ、シスコンなんや、気にせんといて?妹にくっつく“ワルい虫”が気になるだけやから」
ほぉ、なるほど。と言うことはあっちが兄貴と言うことか。
何となく心の方が姉だと思っていたが。
「しかし似ていないな。まぁ男女だと言うこともあるし、そんなもん?」俺が心に目を向けると心はちょっと虚をつかれたように顎をひき
「そんなもんやない?」とそっけなく答える。
「それよりさっき言うた“お飾り”やけど、うち何したらええん?」
「特別なことはしなくていい。時々仕事のパーティーがあるんだが……今日みたいなカジュアルなもんだったらいいけど、お堅い所に行くと独り身だと知られると、女を紹介しようと鬱陶しい連中がいるもんでね。ま、親族なりと婚姻関係を結ばせて会社をでかくさせようと魂胆に違いないが」
「ふーん、そうなん?てかイマドキ?」
「イマドキ。だからそうゆうパーティーに“婚約者”として紹介したい、女避けだ。そう言った意味であんたは申し分ない。見てくれもそうだが、どんな話題もついていけるし、嫌味もかわすだろう。出しゃばらず、かと言って大人し過ぎず」
「任しとき、そんなんお得意やわ」心が胸を張る。
頼もしい限りだ。
「それと―――
朔羅を安心させたい。
俺の言葉は、朔羅を不安にさせる、傷つける。揺らがせる。
俺に好きな女ができた、と思ったらあいつはきっと―――安心する」
お代わりで頼んだウォッカをぐいと飲み干すと、
「ふぅん」と心は小さく頷き、「あんたも損な性格やね」とちょっと悲しそうに笑った。
そしてちょっと身を乗り出し、顏を近づけてくると予想もしないタイミングで
キス
柔らかい唇の感触…赤い唇はすぐに離れていった。
突然のことで目を閉じる隙すら無かった。
心が俺の頬をちょっとだけ撫でると
「あんた、自分が思ってる以上に
ええオトコやよ」
と寂しそうに笑う。
「そうか?」俺も同じ表情で笑ったに違いない。
「“オプション代”は請求書につけておいてくれ」そっけなく言うと
「サービスや。うちかてたまにボランティアしたなるときもあるんやよ?」
「ボランティア……ねぇ」思わず苦笑を浮かべると
「嘘。
ほんまは記憶に―――
残したくなっただけや」
心が無理やり、と言った感じでぎこちなく笑い
「口紅、うつってもうた、ごめん」と言い俺の口元に手を伸ばしてきた。俺はその腕を引き、心が俺の胸に飛び込んでくる形になり、今度は俺の方からキス。
心はちょっと驚いたようだが、触れるだけのキスに顏を離したとき、その顏に笑顔が浮かんでいた。
「俺の記憶にも―――残った。
忘れられない味になりそうだ」
俺は下唇をちらりと舐めた。少し前、心が飲んでいたスコッチと、口紅の味。
忘れられない味に―――なりそうだった。
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