お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
役員専用エレベーター
「おはようございます!入江さん!」

 土曜日は小夜子の病院へ行き、日曜日は美咲と会った。そして週があけて月曜日の朝、本社ビルのエントランスを潜った真帆を出迎えたのは、遠山ゆかりだった。

「…おはようございます」

 社会人の朝は大抵それぞれに決まった時間割があって、朝にエントランスで出会う顔ぶれが似通ってくることは珍しくはない、しかし彼女とは一度蓮との関係を聞かれて以来、朝には会っていなかった。
 それなのに、よりによって今朝会うなんて…そのことになんとなくわざとらしいものを感じながら真帆は振り返る。
 周りの社員もチラチラとこちらに意味ありげな視線を送ってくるような気がするのは、気のせいではないだろう。
 案の定ゆかりは真帆を捕まえると目を輝かせた。

「聞きましたよ!金曜日のこと!」

 真帆は「何のことですか」と小さな声で惚けてみせるが、心当たりがないわけがなかった。金曜日の夕方、蓮に手を引かれて小夜子の病院へ向かう姿を、多く社員に目撃されてしまった自覚があったからだ。しかも、運悪くちょうど就業時間が過ぎた頃だったから、帰宅の途に着く社員がエントランスに多くいて、大注目を浴びてしまった。
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