お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 真帆だって業務中のミスならばすぐにでもやり直しに取り掛かる。
 けれどこの案件は…。
 残念ながら、にっこりと微笑まれてじっと見つめられては言えるものも言えなくなってしまうと真帆は思う。

「そ、そんなにじっと見られたら、い、言えません…次はちゃんと言いますから」

 真帆は頬を染めて首をふった。
 これなら業務中みたいに厳しくされた方がマシだととすら思う。
 けれど蓮は許してはくれなかった。
 
「だめだ。今日は君に俺の恋人だと自覚してもらうと言っただろう。真帆、言ってごらん?俺は誰だ?」

 優しいけれど、けしてノーとは言わせない蓮の低い声に、観念して真帆はおずおずと口を開く。

「れ、蓮さん…です」

 かの鳴くような声でようやく言うと小さくため息をついた。無理矢理言わされても、やっぱりしばらくは慣れなさそうだ。
 一方で蓮はそれで一応は満足したようで、「よくできました」と幼稚園の先生みたいに言った。
 そして安堵した真帆の唇に、ちゅっと音を立ててキスをした。

「な…!」
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