お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 その後二人はそのまま手を繋ぎ、水族館中を時間をかけてまわった。
 南洋の海の大水槽では、ひらひらと舞うように泳ぐ魚たちが真帆の目を楽しませ、蓮は真帆に請われるままに魚の名前を披露した。
 遠くへの旅行経験がない真帆は、ダイビングに訪れたという蓮の南の島の話を目を輝かせて聞き、次の夏休みには一緒に行こうと言われて頬を染めた。
 午後からのカピバラのエサやりでは、「
一人でやります」と真帆がいくら言っても蓮は首を縦にはふらず、結局一緒に参加した。
 そのくせ、絶対に触ろうとはしなかったので真帆はあとでお腹を抱えて笑った。
 その間も何度かは、"副社長"と呼びかけてしまいそのたびにお仕置きをされてしまったが、水族館のすぐそばに広がる大海原がオレンジ色に染まる頃には、ちゃんと"蓮さん"と言えるようになった。
 恋人同士だということを自覚させると言ったとおり、蓮は真帆が戸惑うくらい真帆を大切に扱った。
 逞しい腕が真帆を人混みから庇い、綺麗な茶色い瞳は真帆を優しく見下ろしていた。
 真帆が彼を"上司"として意識しないようにわざと軽口を叩いたり、真帆をからかったりした。
 そして彼自身もしばしの間、普段の責任ある立場から解き放たれて、リラックスしているようだった。
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