お見合い夫婦の結婚事情~カタブツ副社長に独占欲全開で所望されています~
 真帆が予想外だった蓮の誘いに頷いたのは、はっきり言って雰囲気に流されたという感が否めないけれど、それならば余計に後には引けない。
 中学生のデートではないのだから、その先もあって然るべきだと真帆は自分に言い聞かせた。
 蓮のマンションは、会社の近くでとても便利がいい場所にあった。コンシェルジュがいてセキュリティも万全、上層階の蓮の部屋からはスカイツリーも臨めるという、真帆がテレビでしか見たことがない世界だったけれど、残念ながらそれを楽しむ余裕は今の真帆にはない。
 促されるままにシャワーを浴びて、真新しいパジャマに身を包みカチンコチンになってソファに座っている。
 同じくシャワーを浴びた蓮が隣に来てもとてもじゃないが、そちらを見る余裕はなかった。

「真帆?」

うつむいたままの真帆を蓮が覗き込む。同じシャンプーの香りがふわりと香った。
 
「だ、大丈夫…です」
 
 真帆はぎゅっと目を閉じて言った。
 何がどう大丈夫なのかは自分でもさっぱりわからなかったけれど。
 蓮がふっと笑った。
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