続・闇色のシンデレラ
『ちなみにこいつの世話もお前の仕事だから』と命令され、それから部屋も一緒だと告げられた。


せめてひとり部屋がよかったが、大人からすれば5歳児と俺なんて変わらないんだろうな。


ていうか天下の荒瀬組なら家政婦のひとりでも雇えるだろ。


まあ、裏切りが常日頃の世界だから、コストより信頼の方を取るんだろうな。


いろいろ思い巡らせながら全ての仕事をやってみて、紹介された組員の名前と顔を一致させていたらあっという間に日が暮れた。


大変だけど、憂雅っていうガキを風呂に入れて寝かしつけなきゃいけなくて、広い風呂の掃除を割り当てられなかったのはよかったと思う。


ところでこいつは組長側近頭の息子らしい。


とんでもねえガキを押しつけられたもんだ。




「凛兄ちゃん、本読んで」



馴れ馴れしいこいつは就寝しようとしてる俺の枕元に絵本を5冊ほど持ってきて並べた。



「1冊に絞れよ……」

「え、本はギューってしぼれないよ」

「そっちの絞るじゃねえ」



まったく寝る気がないらしいから仕方ない、読んでやろう。


こいつの親父にチクられても困るし。



「何がいいんだ」

「えっとねー、これ!」

「シンデレラ、ねえ……。お前こんなの好きなの?」

「うん、壱華がよくよんでくれるの!」

「ふーん」



何気なく、ぱらりと表紙をめくる。


物語の序盤、悲運の灰かぶり姫を壱華さんと重ねて、静かに読み聞かせを始めた。
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