春夏秋冬
「冬吾、明日朝練あるんでしょ?」

「おう」

「頑張ってね」

そう言って門に手をかけた真実の後ろ姿に声をかける。

「待て、送る」

真実は振り返る。

「歩いて三分なのに」

真実の言葉を無視して、俺も門を通る。

街頭だけが照らす薄暗い道を言葉なく歩いた。

言葉かあればあるほど、真実との間が邪魔されるような気がするから。

太陽が昇れば、また日常が来るだろう。

父さんも母さんも明日には帰ってくるし、俺は部活に明け暮れる。

真実は相変わらず隣のクラスで目立っているんだろう。


この三分が何かを変えることもなく、俺はただ隣を歩く影に無駄に緊張してしまうのだ。
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