エリートパイロットの独占欲は新妻限定


智也がどういう意味で言ったのかはわからないが、少なくとも由宇の鼓動はトクンと跳ねた。でもたぶん、単に初めてふたりで過ごす海外での夜だという意味に過ぎないだろう。

そうとはいえ甘い眼差しで見つめられたら、どぎまぎするのも当然。ぎこちない笑みで返すしか由宇にはできなかった。

フレッシュジュースで乾杯して、料理を待つ。注文したのはナシゴレンやガドガド、イカンバカール。どれもインドネシア料理だ。


「由宇にひとつだけお願いがあるんだけど」


いきなり改まってどうしたのだろうか。


「なんでしょうか」
「夫婦なんだし、敬語で話すのはやめない?」
「えっ……」


突然言われても困る。なにしろ智也は十歳も年上だ。ため口は名前呼びよりずっとハードルが高い。


「なんか距離を感じるんだよね。夫婦っていうより上司と部下みたいな」
「上司と部下ですか?」


思わずクスッと笑う。そんなたとえが出てくるとは思わなかった。
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