エリートパイロットの独占欲は新妻限定


◇◇◇◇◇

智也は走り去っていくタクシーのテールランプを呆然と見送っていた。咄嗟にべつのタクシーで追いかけようとしたが思い留まる。
頑なに智也を拒絶する由宇の心を溶かす前にやるべきことがあったからだ。

手にしていた由宇のスマートフォンは、香澄と智也のツーショットが表示されたまま。失礼を承知のうえで由宇と香澄のメッセージ画面のトップに飛び、智也は店の外に突っ立ったまま最初から読み始めた。

スクロールするごとに苛立ちが募っていく。どのメッセージも写真もねつ造されたものだったのだ。

写真に関していえば、何年も前に撮影されたもの。メッセージは根も葉もないものだった。
そもそも香澄とは、ここまで頻繁に一緒のフライトになっていない。


「ねぇ智也、どうしたの? 由宇ちゃんは?」


なかなか戻らないのを心配したのか、香澄が店の外に出てきた。


「香澄、これはどういうことだ」


自分でも驚くほど声のトーンが低くなる。
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