エリートパイロットの独占欲は新妻限定
由宇が首を懸命に振ると、智也は小さくため息をついた。
「ま、思いがけず由宇の顔が見られたからよしとするか。フランクフルトから帰ったら連絡するよ」
智也はクシャッと由宇の髪を撫で、優しい笑みを浮かべた。
「じゃ、行ってくる」
「い、いってらっしゃい」
恥ずかしくて言葉が詰まる。普段何気なく使っている〝いってらっしゃい〟が、こんなにも胸を高鳴らせるものだとは知らなかった。新婚家庭を瞬時に思い浮かべて頬が熱くなる。
それも、智也のような男との生活なのだから。素敵という言葉をいくら並べてもキリがないと思うような男だ。
……先が思いやられちゃう。
心の中でこっそりと呟き、ぎこちなく手を振って智也を見送った。
せっかくここまで来たのだから、智也の乗る飛行機をこの目で見ようと展望デッキに移動する。六階でエレベーターを降りて屋上のデッキに出た。
天気は快晴。風はまだ冷たいが、澄み渡った空が気持ちいい。飛行場を隅から隅まで見渡せ、爽快感も抜群だ。