エリートパイロットの独占欲は新妻限定
最後にここで飛行機を見たのはいつだったか。小さい頃にはたびたび連れてきてもらった記憶がある。
智也が通ったゲートの方向にスカイジャパンエアの飛行機を見つけて、足を止めた。
真っ白な機体に青と赤のラインが描かれた美しいボディだ。
しばらく見つめていると、機体がゲートから離れ、エンジン音を響かせてバックで移動していく。
尾翼の回転に合わせ、コックピットがゆっくりと旋回。ちょうど由宇と間向かう瞬間、トクンと心拍が跳ねた。
あそこに彼が――。
そう思うだけで、なぜか胸が高鳴る。智也がこちらに気づくはずもないのに目が合っている気がしてならない。かなり自意識過剰だ。
向きを変えた機体が今度は真っ直ぐに滑走路を走りだす。徐々に回転速度を上げるエンジン。その音がひときわ大きくなり、ぐんぐんスピードを上げたかと思った次の瞬間には空に向かって離陸した。
ぶれずに真っすぐに飛び立った機体は、薄いブルーの空に溶け込むように小さくなり、やがて見えなくなった。