年下の男
『学生?』

『いえ…』

『社会人なんだ? 何してるの?』

『別に、居酒屋でバイトとか』

『へぇー…お酒飲めるの?』

『まぁー、そうですね強くなりました。甘いのなら平気です。』


かわいい。それは強いって言わなくない?


『そっか、どこで働いてるの?』


『あ、名刺ありますよ、ガード越えてちょっと行ったとこですけど。』

もそもそとボストンバックから名刺の束を取り出す男の子。

『あ、ありがとう。これ、かわいいね。なかなかいい趣味してる。』

パステルカラーの線が並んだ、シンプルというか、ちょっとショボいけど。

『そうですか? これ、僕作ったんですよ』

にんまりと笑う。ま、私の名刺リストに比べれば大したことないけど。

『若いのにすごいんだー、ウチの店のも作って欲しいな。』

ちゃんとしたとこに頼んだら高いし。かわいくないし、変に夜っぽいし。

『なんの店ですか?』

『んー、飲み屋かな。あ、着いちゃった。』

ホームを歩きながらポーチを探る。

『これ、今の名刺。今度ちゃんと打ち合わせしましょ。この携帯の番号、お店用のだから、いつかけてもいいからね。』

090、なんて書いたらドキッとするかな。そんなわけないか、変にお姉さんぶって、変なの。

『あ、私しか出ないから、ご心配なく』

変なの。

名刺なんかちょっと頼んだら店の子が作ってくれるのに。

心配って、何を心配したと思った?


………。


あー、そうじゃない、絶対そうじゃない。

改札を通って、私はあっち、彼はきっとこっち。


『朝まで来なかったらこっちからかけるから』



振り向いてしばらく――多分3秒くらいで後悔の嵐。

何やってんだ、あたし。
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