いちご
ガバッと両手で首を抑え、慶兄を見上げると、はは~なんて笑っている。
「ま、そー言う事だ」
見上げた慶兄は、私から視線を瑠衣斗に移しそう言った。
開いた口が塞がらないとは、こう言う事を言うんだなあ…。なんて思う程口がおっぴろげだ。
「じゃ、終わったら連絡しろよ?」
「……はぃ…」
顔が真っ赤になっているのが分かる。
返事もまともにできず、語尾はほとんど聞き取れなかっと思う。
じっと見上げているしかできない私に、慶兄はニッコリ笑うと、おもむろにかがんで顔を近付けてきた。
へっ?なに?内緒話??
首を抑えたまま口をへの字にして静止していると、慶兄の手のひらが私の頬に触れ、何の躊躇もなく私の唇に触れた。
時間にしたらほんの数秒だろうが、まるで時間が止まってしまったようで、周りの雑音も耳に入ってこなかった。
「じゃあな。いい子にしてろよ」
腰が砕けるんじゃないか?と思うような甘い低い声で、耳元で慶兄が囁き、離れていった。
周りからざわめきが起きたが、気にする事もできず固まるしかできない。
…………え。
クシャと私の頭を撫でた慶兄は、颯爽と車に乗り込み、軽くクラクションを鳴らすと鮮やかに去っていった。