いちご
「そ、その……うん」
何か言いたいのに、何も言えない。
別に…気を使う事なんかないじゃん。その通りなんだからそれだけでいいんだよ。
「好き…なのか?」
的を得たような質問に、思わず心臓が跳ねて反応した。
慶兄の事は確かに好きだ。でもそれは、たった一人の男の人として…?
違う…。違うよ。私が好きなのは――――………。
「私…は、好きになれる…と思って…」
「好きになれる…?」
ん?と軽く眉を寄せた瑠衣斗は、そのまま私の言葉を待っている。
あぁ…最低だ。そんな理由で慶兄と付き合う事にしたの?
「ゴメン。…何でもない」
最低だ。こんな自分…慶兄に好きになってもらう資格なんてない。
胸が張り裂けそうな程、切なく疼く。
確かに慶兄は、好きにならなくてもいいと言った。
でも、そう口にした慶兄の気持ちは、間違いなく正反対だろう。
そんな慶兄の気持ちに甘えていた自分が、恥ずかしい。最低だ。
「ちょっと…強引だったけど、慶兄は言葉をくれたから…。それが嬉しかった」
何だか慶兄に申し訳なく、思わず素直な気持ちを口にした。
「だから…慶兄の言葉に甘えて、付き合ってみようと思ったの」
私は、慶兄を傷付けたくない…。
きっと、慶兄なら好きになれる気がする。