腕の中の静けさは・・・
心配そうに・・・


や、そうじゃなくて心配してくれてるんすよね。



泣くなんてって思っても考えるだけで泣けてくる。

今、思い出すだけでも苦しくなって胸が痛くなって泣けてくる。






だってもしもって・・・

天音がもしもって・・・







シオンが産まれた日のことを思い出すだけで苦しくなって涙が自然とあふれてくる。




そんなことあっちゃイヤなのに・・・

リアルなあの状況を見ると考えずにはいられなくて・・・



「壮絶」って言葉がぴったりだった出産。






天音の妊娠ライフはたぶん辛い日々だったんだと思う。



天音はそんなこと絶対言わないし思ってもいないだろうし、
オレにもあんなこと言うくらいだからって言うか
母親だからなんだろうけど、出産に対してオレとは少し感情とか心境とかが違うんだと思う。





そんなことはわかってる。

わかってるけど、あの時は本当に考えたし今もやっぱり「もしも」を考えてしまうオレ。





あの日思ったこと。




もぉ、、いい。子供はシオンひとりでいい。


って。







オレも天音も子供は大好き。



オレだって言ったよ。いっぱい欲しいって・・・

天音も3人は欲しいかなって。








でもオレ本気であの時思ったんだ。

天音がこのまま死んじゃうんじゃないかって・・・




産んですぐ亡くなることもあるって聞いた事だってある。

出産ってやっぱりそれほど大変なことで、あの日それを目の当たりにしたオレの中に一層強まった思い。








子供はもういらない・・・って。









こんなこと言ったら悲しむに決まってる。

「大丈夫だよ」って言うに決まってる。



天音の悲しい顔が浮かぶのに選択肢は却下される。



だって天音が居なくなるなんて考えられない。

忘れ形見とかヤダ。





絶対ヤダ。

そんなの絶対ない!







幸せなことにオレたちにはもうシオンって言う天使が舞い降りた。

天音もシオンもオレの腕の中で笑ってる。





幸せだろ?

いいじゃん。3人ですっごく幸せっすよオレ。


十分だよ。
今が幸せで十分。



いい。もういい。このままでいい。

いいすよ・・・




じっとオレを見つめる天音を見つめ返して・・・





でもやっぱり涙は止まらない。









「ユソン?大丈夫?怖いってなにかあったの?それとも私なにかしっちゃった?」


「そんなんじゃない。天音はなにも悪くないよ」








そっと腕の中に抱きしめた。
















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