腕の中の静けさは・・・

eleven

6月のこはるびより・・・
家族4人でソウルへ向かう。

こはるびより。
大好きな日本語。

音がすき。
まだ日本語なんにも知らなかったオレ。

天音の口から聞く「こはるびより」って言う音がすき。

天音がこの言葉を初めて口にしたとき、たしかまだ付き合う前。

たしか、、笑。
付き合う前って言うか初めて会ったとき。



笑。

オレの心に気になるが増え始めた頃




笑。。。

ふは、笑。



増え始めたって言うか一瞬で気になるが発動してオレの中が天音でいっぱいになった

笑。






あの時、天音のことなんて何にも知らなかったのに
会社の会議室の大きな窓から下を覗き込んで
『・・・ふふ。こはるびより(笑)』って微笑んだ彼女の横顔を

やっぱり同じ会議室のコの字型にセッティングされたデスクの一番奥から見ていたオレ。



会議室には何人かいたんだけどオレには初めから天音のことしか見えていなくて・・・

少し騒がしい室内で聞こえたその小さな声に
この人がたまらなく愛しいって思えた。


みんながいなくなった会議室
さっき天音がいた場所に立ったオレ。

同じように下を覗き込むとその高さに目がくらんで目を閉じる(笑)。

大きく深呼吸をしてゆっくり目をあけると公園が見えた。


桜が咲く春の公園。
子供の声が聞こえてきそうなぽかぽかな公園。


こはるびより・・・


なんか懐かしいすね。







「あっぱぁ?」

「・・・・」

「ゆそなーーーーーーーーーーーーーーー」



「あ、、、あん?声大きいよカノン(笑)」

「だってぇ、シオニが呼んでるのにぃ、、」って言いながらオレに抱きついてくるカノン(笑)

「ごめんごめん」

カノンを抱きしめシオンの頭を撫でる。




「シオナ、天音は?」

「電話してるよ。ほら(笑)」







久しぶりのソウル。

カノンが産まれて時期を見てアメリカに住み始めてから
早いもので3年目を迎えていた。

天音もシオンもアメリカでの生活にもすっかり慣れて安心している。
カノンに至ってはほぼアメリカ人・・・笑。


今回2人の結婚式にはガリルも参列するらしかった。

オレたちは土日と、祝日と有給を利用して一週間の予定で少し早めにソウル入り。



ソウルのマンションはアメリカに行くときに売ろうかとも話していたんだけど
たまたま会社の後輩が結婚して次回の転勤までの住むところを探してるって言うから
家具やらもそのまますぐ住める状態で安く貸すことにした。

でも今年の3月に辞令が降りて日本へ行ったから今は誰も住んでいない。




懐かしい我が家で一週間を過ごす。



きっと天音は、会社に顔を出すことになってるからその連絡をしてるんだろう(笑)


少し眠いのか戻ってきた天音に「オンマ~~」って手を伸ばすカノン。

子ザルのように天音のほうに移動するカノンを抱きしめながら
「ごめんごめん」って。



「ソンさんいた?」

「うん。迎えに来てくれるって(笑)」

「はぁ?部長が?」

「あぁ、ウビンがね。笑」

「びっくりした(笑)」




ウビンを待つ間にカノンはすっかり夢の中。

シオンも眠そうで、

「シオナ?」って声を掛けたら目の前に車が停まった。




「待たせたな!!」って変わらない笑顔で降りてきたウビン。

自然と身体が動きハグをする。


「おお、オマエ痩せた?やっぱあっちは大変そうだなぁ~」って(笑)



「お!シオナ。久しぶり。オマエも大きくなったな。こい!」

って両手を広げると迷わず飛び込むシオン。




ウビンにかわいがってもらっていたシオン。

ベンチに座ったままの天音も笑ってる。



「あれぇ、、カノンちゃんはオヤスミか、ハグできないのか、、残念だな」

「なにがハグだよっ」


「なにがって天音ともカノンちゃんとも久しぶりの挨拶だろ~」

「口で言えよ、そんなの」

「・・・・・・バカか。オマエは、(笑)」


人を小ばかにしたように笑うウビン。
ちょっとジタバタぎみのオレにシオンが笑ってる。


なら・・・ま、いっか。笑。











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