腕の中の静けさは・・・
やっと声にしたシオンの「うそつき」


前に天音がシオンに言ったんすよね。

アメリカ行きが決まった頃、シオンが泣きながら起きてくることが増えて心配になってアメリカ行きを伸ばした。



天音がいなくなる夢を見たって大泣きするシオンに

『どっこもいかないよ。いくわけないじゃん。だいすきなシオンやカノンがいるのにどこもいけないよ。いかないよ』って言った天音。

きっとシオンはそのことを言ってるんだと思うんだけど・・・





どこにも行かないって言ったのに「うそつき」って。







「ユソナ~~」って大きな声でカノンに呼ばれて現実に戻され我に返る。.

長い長い夢を見ていた気分だった・・・




穏やかな日差しの中、寄り道ばかりカノンの歩幅にあわせて歩くシオン。

そんなふたりの姿を見つめながらゆっくり歩き出す。

時々振り返るカノンは笑ってるけどシオンは時折険しい顔
オレはそんなふたりにいつもの笑顔を返す。

にっこり笑い返すカノンに少し呆れたような顔をするシオン。


天音に会うまでのこの道のりが長く感じたことは今まで一度もない。





デニムの後ろポケットに無造作に仕舞い込んだ3通の手紙にそっと触れる。


そしたらカノンが急いで走ってオレのもとにやってきた。





神妙な顔をしてるから


「どうしたんだよ(笑)」

「ん…だれかいる」

「え?」



「うん、オンマの所に男の人と女の人と赤ちゃんと男の子がいるの・・・」

「そうなの。誰だろ?」

「んもっ、カノンがきいてるの!」




プリプリ怒りながらオレの手を握りしめて引っ張るように歩き出すカノンはやっぱり似ていて
切ないようなうれしい様なさみしいような・・・

相変わらずヘンな気分にさせられる。(笑)










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