日本一のヤクザ幹部は、本当は私を溺愛している。
「はい、根があるので
そこに根ずく、などの意味があり
病室に根ずくって事から
いいものではありませんよ

ありがとうございます。」


「へー、お見舞い持ってくる方も大変ですね」


「いえ、さほど」


「でも、私はいいですよ!
どうせ悪夢を見て夜発作を起こさなくなるまで
此処を出れる気はしないですから」


「まだ、発作が?」


「えぇ、夢の事は何にも覚えてないのに
怖くて悲しくて
一生私と共についてくる気がする夢です。」


「それは、無くした記憶の?」


「と、医師は言っていますけど
真実は分かりません」


そう言って彼女はへらりと笑う。


こんなふうに笑う彼女が正解なのか


昔みたいに堂々としている彼女が正解なのか


俺にはまだ分からない。


ただ、


まだこの胸に残って消えない恋心と


今まで一方的に貰った彼女からの恩の為に


俺は自分のエゴで彼女に尽くす。


もし彼女が記憶が戻ることを望めば
俺は彼女に全てを打ち明けるし


もしこのまま彼女が一般人として過ごすなら


俺はどちらかの選択をしなければならない。


それが彼女の為か俺の為かは分からない


「一ノ瀬さーん。
診察のお時間ですよー」


「はーい!」


「じゃあ、鹿妻さん。
また来週」


「はい、では」


バイバイと手を振って病室を出る彼女に
手を振り返す。


さぁ、戻ろう


現実へと
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