例えば、こんな始まり方
翌日は、2人ともゆっくり、9時に起きて。純一の作る朝食を食べて。

「洋服の緑山、とかでいいかなぁ?」

と言う私。テレビCMではよく見るけど、行ったことはない。

「いいと思う。シャツに、スラックスに、ジャケット、くらいでいいかな」

「じゃあ、駅前にあるから、行こう」

アパートを出て、「洋服の緑山」に向かう途中、ごくごく自然に、純一は手を繋いできた。年甲斐もなく、どきんっ!としたが、手を繋ぐくらい友達でもするよね、と思い直した。

「いらっしゃいませ~」

「緑山」の女性店員が迎える。

「どういったものをお探しで?」

「ちょっときちんと・・・でも、スーツとかじゃなく、ちょっとカジュアルなシャツにジャケット、それにスラックスを」

「そうですね・・・こちらとこちらとこちらはいかがでしょうか?」

緑系のチェックのシャツに茶色のジャケット。それにソフトベージュのスラックス。

「試着してみてもいいですか?」

純一が試着室に入ると、その女性店員がささやいた。

「彼氏さん、イケメンですね。背も高いし」

「はぁ・・・そうですか?」

私にとっては、どうしても、「ロッキー」を思い出させてしまう、あの瞳。

「どうかな、真由?」

「すっごい、似合ってるよ。これにする?」

「いいの?」

「純一くんの面接のためなら・・・」

「ありがとう」

「裾直しは必要なさそうですね」

と店員さん。

と言うわけで、お買い上げ~。2万弱の出費となった。

「必ず、返すから」

「うん、信じてるよ。あっ、ねぇ、これからランチに行かない?私のおごり。」

「え、悪いよ・・・」

「昨日、美味しい夕食を作ってくれたお礼。それと、前祝い、かな」

純一が満面の笑顔になった・・・やっぱ、ロッキーだ。

レストランに向かい、手を繋いで純一と歩いていると、女性たちの羨望のまなざしを感じる。やっぱり、純一は一般的に言って、「イケメン」なのだろうか。

「ここでいい?」

「横浜パスタ」というパスタ屋さんで純一に言う。ここは、焼き立てパン食べ放題の生パスタもあるパスタ屋さんだ。
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