例えば、こんな始まり方
「食べよか・・・」

純一が言った。かすかだが、表情にすがすがしさがうかがえる。

「うん。・・・プラチナリング、売っちゃってよかったの、本当に?」

「あぁ・・・もう、彼女とは修復不可能だからね。借金の件で会うことはあるかもしれないけど、それ以上でも以下でもない」

「そういうもの?経験がないから、よく分からないけど」

「愛情が冷めるときって・・・ほんとあっけないんだよね。僕たちが特殊なのかもしれないけど。もう少し時間が経ったら、実感がわくのかもしれないけど。離婚成立して、1週間経ってないから」

「そうなんだ。ねぇ、仕事は明日からでしょ?今日は、サンドイッチでも持って、井の頭公園にピクニックに行かない?」

「いいね、乗った!」

「それから、もう少し、純一くんの洋服を買おう。普段着ももう少しあった方がいいでしょ?あ、あとセカンドバッグか」

純一が申し訳なさそうに言う。

「ごめん。あと少しだけ、お金貸してな。給料日には払うから」

「いいよ、いいよ、純一くんのこと、信じてるから。でも、義理のお父さんにも借金返さなきゃいけないのは大変だね。1千万か・・・」

「ご厚意で、無期限、無利子で貸して下さったから。感謝してるんだ」

「そう・・・」

「じゃあ、準備していこうよ。サンドイッチは僕が作ってあげるから」

「ありがとうっ。天気もいいし、最高ね」
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