やっぱりあなたと ~クールな上司は強がりな部下を溺愛する~
「市橋」
「はい」
午後になり和哉に再び呼ばれた莉緒。
「〇〇デパートの現状見てくる。一緒に行くか?」
「はい。ちょうどお渡しする見積もりがありました。」
「了解。15分後でいいか?」
「はい」
あくまで職場では平静を装うふたり。
でも、少し目が合うだけで、言葉を交わすだけで、明らかに胸が高鳴る。

そこを隠すのに必死だった。

「古屋君の独り立ち。ずっと考えてたんですか?」
「あぁ。」
ハンドルを握る和哉を見ながら莉緒が聞く。
「絶対に大丈夫っていう確信よりも、たぶん何かしら起きるだろうっていう予想で任せた。」
「え?」
「失敗も必要だ。ただ、失敗と後悔だけで終わらないようにフォローしてほしい。」
和哉の言葉に、和哉の後輩の育て方を知るようで莉緒は新しい感覚を覚えた。
「ずっと守られてたら、戦う覚悟も、負ける悔しさも、覚えないだろ。そしたら育たない。」
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