綾瀬くんは私が大嫌い
荷物をまとめる夏樹ちゃんをリビングに置いて私たち3人は春樹の部屋に上がっていった。
何みようかとか、何から食べようか、とか。用意しながらケタケタ笑う声が8畳の部屋の中を満たす。
月額見放題で膨大な量の中から選ばれた映画を一本見終わってから、じゃあ次はこれをみようと春樹に提案されて承諾した私と綾瀬くん。鑑賞中、男二人はベットの上に座っていて、私はベットを背もたれに座っていた。
映画の内容に夢中になってきた頃だった。さっきまで一人でペチャペチャ喋っていた春樹が静かになっていたのも気づかなかった私の隣に、誰かがいい香りを引き連れてくる。
「、ん?」
綾瀬くんがいきなりベットから滑るようにして私の隣に座った。そうするのが当たり前だったかのように隣に座られたので少しびっくりして疑問を向けると、綾瀬くんは後ろを少し振り向く。
振り向いた先にいる春樹。口を開けて眠りこけていた。体の大きい彼は横たわり、ベットを殆ど占領していた。
きっと綾瀬くんに寄りかかっていたに違いない。それが嫌だった綾瀬くんがどいたのだろうか。結果的に綾瀬くんの居場所は無くなっていた。
は?何寝てるの?この人。
「ねぇ!春樹!春樹がこれ見たいって言ったんだよ!」
春樹の顔をしつこくペチペチ音を立てて叩く。
「ねぇ~、見ないの?お菓子全部たべちゃ…」
食べちゃうよ?
そう言おうとして言葉が喉で詰まる。
綾瀬くんが春樹を叩く私の手を、握ったからだ。
「っ、え」
さすがに心臓が大きく脈を打つのが分かった。
綾瀬くんはそっと口を開く。
「春樹、せっかく部活休みだから起こすの辞めよ。疲れてると思うし。」