堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~

 抑揚のないその声に、彼に歩み寄ろうとしていた足が止まった。〝誰〟って……志門さん、私のことがわからないの? そんなわけないよね……?

「だからね志門、昨夜から説明している通り、あなたはここにいる瑠璃さんと婚約していて、来年の春には赤ちゃんが生まれるの。心から愛していた人よ。顔を見たら思い出すでしょう……?」

 お母様がもどかしそうに説明するけれど、志門さんの顔色は変わらない。真顔でジッと私の顔を観察したかと思うと、諦めたように目を閉じて首を横に振った。

「……ダメだ。思い出せない」
「志門……」

 お母様は肩を落とし、それから気まずそうに私のもとへ歩いてきた。そして、呆然と立ち尽くす私のそばで、声を潜めて話す。

「今の志門は、記憶障害が起きている状態だそうよ。特に、ここ数カ月の記憶が思い出せないみたいで……私や主人のことはすぐにわかったんだけれど、自分がどうして怪我をしたのか、誰を守ろうとしたのか。そういうことが、全然わかっていないの」
「ここ、数カ月……」

 それはまさに、私たちが出会い、愛を育んできたかけがえのない日々ではないか。志門さんの頭の中には、それが何ひとつ残っていないというの?

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