堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
不安を抱えて見つめた先の志門さんは、うつろな瞳でぼんやり窓の外を眺めていた。
お母様に「また来ます」と告げて、結局彼とは一言も言葉を交わさずに病室を出る。あまりの喪失感で、周囲の景色が黒く塗りつぶされたように見えた。
彼が私を思い出す保証はあるのだろうか。あったとしても、それはいつになるの?
不安だらけの心を抱えて病院をあとにした私は、志門さんと暮らす家でなく、大森の実家へとタクシーで向かった。志門さんのいない新居では私がひとりになってしまうと心配した兄に、昨夜そう勧められていたのだ。
「おかりなさい、瑠璃」
「ただいま」
実家では、私のために仕事を休んだ母が、玄関で出迎えてくれた。家を出てまだ一週間と少ししか経っていないのに、懐かしくてホッとして、私は思わず涙ぐむ。
「お昼まだよね? 作っておいたから、一緒に食べましょう」
「うん、ありがとう」
手を洗ってダイニングに移動すると、母お手製の親子丼がテーブルの上で湯気を立てていた。
我が家のキッチンは車いすに適した構造にはなっておらず使い勝手が悪いのだが、母は昔から不満ひとつ言わず、いつも美味しい料理を作ってくれる。
……お母さんは、どうしてそんなに強い人なのかな。