堕とされて、愛を孕む~極上御曹司の求愛の証を身ごもりました~
「お目当てのザッハートルテ以外にも、ケーキはたくさんあるよ」
「本当だ……。どれも美味しそう……」
入り口近くのショウケースの中には、見た目も美しい様々なケーキが二十種類以上並んでいた。つい目移りしてしまうけれど、やっぱり一番に食べたいのはザッハートルテだ。
チョコレートケーキの王様とも評されるこのケーキを初めて世に生み出したのは、フランツ・ザッハーというパティシエ。
本当なら彼の息子が開いたホテルのカフェが出す『ザッハートルテ』こそが元祖らしいのだが、今やこの店のようにウィーンのカフェではどこでもザッハートルテを提供しているので、私は今回の旅行で色々食べ比べてみたいと思っている。
真っ白なクロスのかかった四角い席に案内されると、志門さんに頼んでケーキとコーヒーを注文してもらった。数分で、ふわふわに泡立てたミルクの乗ったコーヒー『メランジェ』と、念願のザッハートルテがふたり分運ばれてくる。
「これが本場のザッハートルテ……!」
間にアプリコットジャムの塗られたスポンジに、艶やかなミルクチョコレートのコーティング。脇にはたっぷりのホイップとラズベリーが添えられ、美しく芸術的なひと皿だ。